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第241回 海の生き物たちのお医者さん

 海響館には海獣類、魚類、ペンギンなどたくさんの海の生き物が生活しています。その生き物たちが元気に過ごすために欠かせない存在が「海の生き物たちのお医者さん」、つまり「獣医」です。海響館には現在3名の獣医が在籍し、常時1名以上は出勤するという体制をとり、動物の急な体調不良にも対応できるようにしています。今回は海響館の獣医の仕事に密着していきます。

 まずは朝一番、イルカの採血から始まりました。

 海響館では生き物たちの健康管理のため、定期的に採血を行っています。主にイルカやアシカなどの海獣類とペンギン類が対象なのですが、魚類ではマンボウも採血をします。(採血の詳しい内容はイルカアシカ情報第201回をご覧ください。)採血といっても血管のどこに刺しても血液が採れるわけではありません。血管の位置や針の深さなど、獣医の経験による技術があってこそ安定して採血ができ、それは動物たちの健康を維持するためとても重要なことなのです。

 採血が終わったら血液の状態を調べるために、機械や顕微鏡を使って検査を進めていきます。顕微鏡では血液成分を詳しく見ていきます。その日の血液状態だけでなく、過去に採血した血液の状態と見比べて、異常がないかを見るなど、獣医による細かい検査を経て、生き物たちの健康管理をしています。

 続いては、ペンギンの聴診を行うようです。

 聴診は、主に、「咳がでる」「呼吸に異常がある」などの症状の時に実施し、心臓の音や呼吸音を聞くことで異常がないか確認するために行います。スタッフがペンギンを落ち着かせながら、聴診器を当てています。もし異常を感じたら、レントゲン検査などを行うことになります。

 血液検査や聴診以外にも多くの種類の検査があり、生き物の状態に応じて行う様々な検査を通し、体に異常がないかの診断と、病気の予防をすることが獣医の大切な仕事の1つです。

 さて、今度は魚類のバックヤードにやって来ました。治療中の個体の観察です。投与する薬の量は適切なのか、次にどのような処置をするかなど、展示スタッフとの意見交換と、生き物たちの様子を観察し、判断していきます。

 最後に薬剤の在庫チェックです。必要な時に薬が不足してしまったら大変です。薬がどのくらい必要なのか、何かあった時にどのような薬を準備しておくか、薬の管理もしっかり行います。

 獣医の仕事は検査や治療だけでなく、薬剤の管理、動物の状態を知るためのスタッフとの意見交換、検査や治療に必要な物品を準備するための書類作成と多岐に渡り、今回紹介したのは獣医の仕事のほんの一部です。私たち展示スタッフは動物たちの海響館での生活をより良くできるよう日々工夫をしていますが、その基盤には、生き物たちが健康に暮らせるようにする獣医の様々な作業があるのです。

海獣展示課

髙木 陽友美

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