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第201回「動物たちの健康管理」

 私たちトレーナーは、動物たちが元気に過ごしているか、体調は悪くないか、と日々観察をしています。観察を行うことで普段との変化にいち早く気づき、素早く対応ができるのです。しかし、観察だけでは体の内面で起きている体調不良には気づくことが難しいため、海響館では様々な検査による健康管理をしています。第198回イルカ・アシカ情報で体温測定についてご紹介しましたが、体温測定の他にも、血液検査、便検査、尿検査、胃液検査、内視鏡検査など、たくさんの検査行っています。今回はその中から定期的に行っている血液検査についてご紹介します。

 採血に使用している道具は、人間に使うものと同じです。血液成分の検査項目も、イルカ・アシカは私たちと同じ脊椎動物ですので、人間と同じ項目を調べます。血液成分を調べることで体の状態を示す様々結果が得られ、その結果を見ることで、病気の予防や治療に役立たせることができるのです。

 採血の部位については、動物によってそれぞれ違い、海響館ではイルカは尾ビレから、アシカは腰か後ろ足から採血をしています。

 人は採血されることがわかっていますし、嫌でも針を刺されることを我慢しますが、動物たちは採血のことがわからないので、いきなり針を刺せるわけではありません。驚いて暴れてしまえば人間も動物も危険になので、少しずつトレーニングを重ねていきます。まずは採血の体勢でリラックスする、周りに人が近づいてきても落ち着いている、針を刺す場所を触っても大丈夫になるなど、採血する状況に少しずつ慣らしていき、次のステップではつまようじを針に見立てて針を刺す場所に当てます。針が刺さるよりは小さな刺激ですが、慣れてもらう上では大切なステップです。様々なステップを踏むことで、動物も安心し、人間も安全に採血が行えるようにトレーニングをしています。

 海響館では月に1度各個体の血液検査を行っており、異常がないかをチェックしています。そして、体調不良が疑われた時にも、まず血液検査の結果からどこに異常があるのかの診断に役立てます。また、血液検査は病気以外にもホルモンの値を測定することで、動物の性成熟や繁殖時期の把握や、妊娠判定にも利用することができます。

 採血は技術的な部分と動物の協力の両方を必要としますが、血液を検査することは動物たちの健康管理、飼育管理を行う上で大切な検査の一つなのです。

海獣展示課

高木 陽友美

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