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海響館の開館以前から

 イルカアシカ情報第199回にもある通り、海響館では山口県や福岡県北九州市周辺の沿岸におけるクジラの仲間のストランディング・混獲情報をまとめており、海響館が開館するよりも前の1998年5月から始まった情報収集活動は2023年の4月末で丸25年を迎えました。

 その25年に渡る活動の中で収集した情報数はなんと487件!頭数にすると518頭もの鯨類のストランディング・混獲の情報が集まりました。その487件のうち約88%という大多数を占めているのがスナメリで、428件430頭というとても多くの情報が集まりました。情報数が膨大なため、精査できてはいないのですが、生まれたばかりであろうスナメリの幼齢個体が発見されるのは3月から7月までの期間であり、過去の研究で示唆された瀬戸内海のスナメリの繁殖時期を裏付けるような結果も見られています。

 発見されるスナメリの約90%は死亡した状態で見つかるのですが、極まれに生きている状態で海岸に座礁したり、漁網に絡まったりして見つかる個体もいます。多くの場合、そんな時はまず現場に駆け付け、ケガをしていないかどうか、また正常な呼吸をしているかどうかなどの状態を確認し、海に放しても生きていけると判断すれば沖合で放流し、医療ケアが必要と判断すれば海響館に収容してケアを行ってきました。25年間の活動の中で、生存した状態で発見されたスナメリは全部で19頭いますが、生後間もなく親とはぐれてしまった個体などは発見時から衰弱が激しく、ケアを行っても助けることができなかったこともあります。現在、海響館の展示プールには2頭のスナメリがいますが、その内の1頭の「ひびき」は2001年に山口県内で救護し、国の許可を得てこれまで健康に飼育し続けている個体です。また、もう1頭の「あいす」は、なんと救護したスナメリ同士での繁殖に成功した国内初の個体なんです。助けられなかった命もありますが、そこから多くのことを学ばせてもらったからこそ、今の飼育技術に繋がっていると思います。

 これからも海響館ではこのような活動を続けると共に、海響館の身近に住むスナメリの生態や行動について、皆様にもっと知っていただけるよう、解説給餌などを通して情報を発信していますので、是非ひびきとあいすに会いに来てくださいね。

※ストランディングとは、クジラやアシカ・アザラシなどの海棲哺乳類が生死に関わらず海や河川などで座礁・迷入・漂流・漂着の状態で発見されること

海獣展示課

原田 一孝

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