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vol.257 関門海峡に、巨大なタコ!

 ジュール・ヴエルヌの海洋冒険小説「海底2万海里」では、潜水艦ノーチラス号で巡る海底では巨大な水中生物に遭遇する。艦名がオウムガイの学名と同じなのは、体の構造が潜水、浮上が容易なように細かく区画化されているところが似ているからなのだろう。海響館開館当初、オウムガイが展示されていた水槽前でこのような話題を来館者と話したことが思い出される。

 遭遇する大物は、巨大なタコもその一つである。体長8メートル、青緑がかった巨大な眼球、頭から生えている8本の腕、というより脚は体の2倍の長さ、触手の内側には半球状の口金型の吸盤が250個並んでいる。(大型のマダコで腕1本当たり200個(8本で1,600個)ほどらしいので、250個なら全部で2,000個にもなる。)

 こんな巨大なタコが10~12匹もノーチラス号にまとわりつく。海面浮上したノーチラス号と大ダコとの戦う武器は、モネ船長、他船員たち10人ほどによる攻撃用の斧と銛だ。一瞬タコに巻き付かれた男、タコは8本の腕のうち7本まで切り落とされたが、残された1本で男は犠牲者となる。

 先日、夕方、久しぶりに散歩の途中、近くの漁港に立ち寄ってみた。来春まで朝市は中止と掲示されていた。以前に、何度か朝市に来たことがある。タコに人気があり、購入すると塩で揉み、ぬめりを取ってからゆがいてくれる。タコを買いに来たのに、その時は、マグロの解体ショーがあり中おちを買って帰った。

 夕方の漁港はほとんど人影がなく数人の子供が、岸壁で釣りをしていた。釣果は如何にとその方向へ歩いて行くと、突然、左側に巨大な構造物が目に入ってきた。

近づいてみると超巨大なタコがタコ壺に入り横たわっている。

何と「海底2万海里」の大ダコがこんな近くに鎮座していた。「関門ダコ」の掲示が見える。あっけにとられて前から後から、右から左からとカメラを向けていると、短い釣り竿を持った初老の男性が自転車でふらりと近寄ってこられた。早速、眼前の「怪物」のことを尋ねると、FRP製で5年ほど前、自分が製作した由。

 潜水艦ノーチラス号を襲った大ダコもこのくらいの威圧感があっただろうと、その時の様子が実感できた。斧や銛で戦っているが、現代ならどんな戦いが展開されるのだろうか。しかし、関門海峡潮流水槽に展示されていたマダコ、いつもタコ壺内でコブダイなどからの攻撃に備える専守防衛体制だったような気がする。

 自転車の男性によると、昔は、タコ漁の最盛期には1週間に1,000匹ほど漁穫があったらしい。来春には朝市が再開されるようだが、今度はタコを買って帰ろう。とはいえ、タコの旬は半夏生のころらしいから、又気持ちが変わるかもしれない。  

(参考:海底2万海里ジュール・ヴエルヌ 松村潔 訳)

解説ボランティア:唐櫃 山人

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