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Vol.220 イルカに会える海岸

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何?あれは?! 何? 大きい? 大きなスナメリの尾ビレが垂直に見えたような・・?

左の方へ、スナメリの尾ビレ? 否、イルカ?!
半信半疑で口々に叫んでいるうちに、更に左の方に再び現われた。

 

イルカだ!イルカだ!イルカだ~!海岸から沖へ約150m付近。通称テンカチ岩からすぐのところ。時計を見る、4時4分、あと1時間余で干潮になる時間帯。水深はゆっくりと浅くなってきている。今度は、はっきり背ビレを視認。更に数十秒後、もう一度確認してくれと言わんばかりにゆっくりと濡れ羽色の背中と、スナメリにはあるはずがない背ビレを見せた。もう迷うことはない「イルカ」である。背ビレはシャープな鎌のような残像がのこっている。カマイルカだろうか? ヒレの後縁端が白かったかどうか思い出せない。

海響館で、ショーの合間に自由遊泳している時のイルカは、頻繁に浮上、プシューッと音をたてて呼吸をし、背びれをみせている。海のいのちを間近に感じられる瞬間である。自然界でも同様と期待して後を追ったが、それ以降、全く背びれを海面に現わすことなく、浜辺の人たちのそれぞれの心に何かを残し、満珠島の方へ去って行った。突然夕立がサッと過ぎたあと、虹が残されたような感覚である。あたりはまた元の静けさに戻った。

湖のような海面、七夕も近いどんよりした日曜日の夕方、いつもなら行き交う大小の船が今日はまばらである。寝たり起きたりしている対岸のクレーンも今日は珍しくどれも直立している。ここ三軒屋海岸では、釣り人、磯あそびをする親子連れ、少し離れたところでは若者がバーベキューを楽しんでいた。そんな静寂を破ったのは1頭〈2頭?〉のイルカだった。

この海岸でイルカを見たという話は耳にしたことがない。最近は、「スナメリが見える海岸」と報道されることがあるが、これからは「イルカ」も追加されることになりそうだ。この度は、いつもスナメリ観察に来ている地元のSさんが最初の異変に気づいて声を上げた。雑談中でも心の目は海の方に向いていたのだ。
スナメリが出現するコースとほとんど同じで、その動きもよく似ていたことも幸いしたかも知れない。日本海側の響灘から迷い込んだのだろうか。そうだとすれば、関門橋下の潮も速く、船舶が輻輳する早鞆の瀬戸を越えてきたことになる。平成15年7月には吉見漁協の定置網にシワハイルカが、翌8月、今度はハナゴンドウクジラがまた吉見に迷い込み、何れも海響館で保護されたことがあった。関門海峡での野生イルカの出現は、海響館のホームページにも報告されているが、平成15年の5月に館から視認できるところにバンドウと思われるイルカが現れている。

遡って、源平合戦の勝敗の占いに使われたという言い伝えがあるこのイルカ、自軍の舟の下をくぐったため平家の運命はきまったという。源平入り乱れた戦いに、押し寄せたと言う1,000頭ものイルカは、白髪三千丈と同類としても、当時、この海峡でしばしば見られたのだろう。今では1頭出現するだけでも話題になるほど、830年の時間がその環境を変えてしまった。

解説ボランティア:唐櫃 山人

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