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Vol.216 サプライズ:その3

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・「東京葛西水族園のマグロの大量死」

・「クマノミが、イソギンチャクに刺されぬ謎、女子高生が解明」

・「チンアナゴなど産卵の撮影成功 世界初」

何れも、今年に入ってからマスコミが大きく取り上げている話題の水族館関連ニュースである。特に、マグロ以外の2件は、海響館でも飼育、展示されている生物であり、来館者の中にもこれらの話題に興味を持たれている方が多くおられるかも知れない。

クマノミとイソギンチャクの関係は、サンゴ礁水槽解説の定番で、カクレクマノミがハタゴイソギンチャクの触手の中を出入りしている水槽では必ず話題になる。刺されない理由はと問われても、クマノミの体表には「特殊な粘液」が分泌されているからと、自分でもわかったようなわからないような大雑把な表現しかできなかったが、女子高生のおかげで更に話題が少し広げられそうである。

チンアナゴが展示された当初、移動するときはどうするのだろうかと何度もクイズにして楽しんだ。砂から出るところを見たことがないので、受精も産卵も砂の中なのか、それとも他の魚と同じように海中なのかよくわからなかったが、今回世界初の映像を見てその疑問が解けた。以前、チンアナゴは食べられますかと女性から質問があった。マアナゴならチンすればアナゴ丼ぐらいにはなるかもしれないが、チンアナゴのどこに食欲がわいたのだろうか?

実は、以前「チンアナゴ」を食べたことがある。知人から紙袋をもらった。開けてみると「チンアナゴ」と書かれたラーメンが1袋。海底(みそ味のスープ)からチンアナゴが顔をだす様子からこの名前が付けられ、流れてくるプランクトンを食べるので潮の流れの方に顔を向けると、食性や生活様式まで細かく絵入りで解説されている。因みに、原材料表にはチンアナゴの字は見当たらない。ただの味噌ラーメンだったが、それでもチンアナゴを食べたような気分になった。

一方、海響館では、年初にカラス(フグ目フグ科)が久しぶりに展示された。 カラスが、トラフグ水槽から姿を消してから、もう十年ほど経ったのではないだろうか。その間に、昨年、国際自然保護連合のレッドリストに「ごく近い将来、野生で絶滅する危険が極めて高い絶滅危惧種1A類」に認定されてしまった。同じく絶滅が心配されている太平洋クロマグロより2段階も厳しいランクである。
乱獲により、個体数が過去40年間で99.99%減少と報道されているので、もう見ることは難しいと思っていた。それが、突然水槽に現れたから驚いた。地元のマスコミの報道は見なかったが、0.01%のカラスが、展示されたのである。クロマグロやニホンウナギのように保護対策はとられているのだろうか?トラフグとよく似ている。水槽の前に立っても、特にそのことを強調して掲示されていないのでトラフグとカラスの2種類が混泳していることに気付く人は多くはないのではないだろうか。

トラフグとは臀ビレが黒いことで見分けられるので、遊泳中のブリとカンパチとヒラマサの御三家を見分けるよりははるかに容易である。けれども、自分も混泳されていることを知らされるまで気が付かなかった。カラスはいないという先入観があったからかもしれない。小さな水槽の中にも、興味ある大きな話題が三つも増えた。

解説ボランティア:唐櫃 山人

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