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Vol.196 味くらべ

 

 今年は、八十八夜が過ぎても遅霜や雪のニュースが聞かれ、3月から4月上旬の気温で青葉もホトトギスも驚いたことだろう。ところが、それから半月も経たないのに突然、今日は真夏日だ、熱中症に注意などのニュースが流れたりする。日本の四季は、そのうち春と秋の期間は、今の半分ぐらいになるのではと思うのは杞憂であればよいのだが。とはいえ、例年、新緑の5月、旬の魚といえば初ガツオということになっている。早速、食卓にもタタキがお目見えした。

 サザエさんのマンガでは、磯野家の「カツオ」君がよくでてくるが、当館でサバ家(科)のカツオが展示されたかどうか記憶にない。代わりにというわけではないが昨年、「ハガツオ」(歯鰹)が展示されたことがあった。カツオと同じスズキ目サバ科で、歯が犬歯状で鋭いのが和名の由来らしい。語尾にカツオが付く魚は「マナガツオ」というのが3階瀬戸内海水槽に昨年末まで展示されていた。特徴のある外形だが、どういうわけかカツオが属するサバ科でなく、マナガツオ科の魚になっている。カツオの仲間ですと解説してよいものかどうか、科が異なれば人間とチンバンジー以上に違ってくるのではないだろうか。仲間でなく遠い昔々の知人ぐらいだろうか。(磯野家では、サバ科のカツオ君もタラ科のタラちゃんも親戚一族だが)

 2月ごろだった。その「マナガツオ」が夕食のテーブルにのった。料理されてしまった魚は、姿、形は勿論、色まで変わってしまってその名前を言いあてるのは難しいが、今回は最初からぴたりと当たった。いつもは、2、3種の名前を言っても当ったり外れたりで、今回は水族館解説ボランティアとして面目一新たった。と言っても、あまり自慢にはならない。いつも解説の対象になっていたことと、「マナガツオ」は外観がひし形もどきで識別しやすいからである。白身の魚である。舌にのせると融けてしまいそうなやわらかい感触で、なかなかの美味である漢字では、真魚鰹、または、カツオに似ているということか似鰹とも書かれるらしいが、味といい形といい、似ているところはあまり見当たらないのだが、どこか似ているところがあるのだろう。

 マナガツオの方言を調べてみた。銀色をした平たい魚ということで「ギンダイ」(魚津)や、「丁銀」(岡山)、モンシロチョウに色や形が似ているので「チョウチョウ」(辰ヶ浜 白崎)、身が堅いことからか「まながた」(長崎、熊本、有明海))などなど。当地では「はま」とあったが、あまり耳にしない。

 マナガツオ科はイボダイ亜目に属し、地元のスーパーでは、「シズ」の魚名で売られている「イボダイ」(耳石が宝石のように美しい魚)や、深い海の生き物水槽に展示されていた「メダイ」(地元では「ダルマダイ」)もお仲間である。

 この仲間の共通点といえば、胃の他に前胃があるのが特徴とか、体型、顔つきもどこか似ている。並べて食したわけではないが、食感が共通しているように思える。

 先日、たまたま、取れたての生のバフンウニとムラサキウニの殻を割って試食する機会があった。別々の日に味わうのと異なり、同時に味わうとその違いを舌がはっきり教えてくれる。その時の軍配は、バフンウニだった。とは言え、味覚は雰囲気やその時の体調などに影響されることがあるので、別の日、別の場所で試してみたら同じ結果がでるかどうか。機会があればマナガツオ、メダイ、イボダイの仲間も一度に味くらべをしてみたいものだ。

 

解説ボランティア:福井 正嘉

 

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