menu

loading...

Vol.194 直角=90度ではなかった?

 1階イルカプール側面の水槽窓からは、イルカの水中でのダイナミックな泳ぎを楽しむことができる。特にジャンプの時は、勢いをつけて助走し、離水する瞬間は2階の観覧席から見るのとは一味違う視界が広がり、来館者にはお勧めのスポットである。  実は、この窓の隣に2m×1.5mほどの珍しい化石が展示されている。一見、写真のように見えるが、よく見ると厚さが2cmほどもある。石灰岩だろうか。気付かずに通り過ぎる来館者も多いようだが、「直角石」の化石である。説明文にはモロッコ産とある。

 オウムガイは、開館後しばらくの間、生きている化石といわれているカブトガニやシーラカンスと共に2階に展示されていた。動作が非常に緩慢で、ふわっと浮いている様は癒し系である。生きている化石といわれる生物は、活発なものが少ないが、このことが何億年も世代が続いた秘訣だったかもしれない。  来館者には、初期のオムムガイの仲間は、まっ直ぐだったと、珍しい化石があることを付け加えていたが、なぜ直角(90度)かという疑問には答えられなかった。同じような例がある。全身がまっ黒なフグの仲間のアカモンガラ、どこから見ても赤くはないのだが、口を開いた一瞬、歯が赤く見える。直角石にもそんな秘密があるのかも知れないと思っていた。  ところが、まっ直ぐな角(ツノ)のような石(貝)ということだと気が付いたのはつい最近のこと、直角の「角」はアングル(angle)でなく、ホーン(horn)だったのだ。サイなどの角によく似ている。直角=90度という先入観が落とし穴だったと言い訳しても始まらない。とんだ早やとちりだった。これで、来館者から質問があっても自信?をもって説明できそうである。

 この直角石、長いものは10mもの化石が発見されているらしい。気の遠くなるような5億年も昔の話である。想像もできない生物がいても不思議ではない。オウムガイ類は、時系列的に、オウムガイ(直角石型)、オウムガイ(うず巻型)、アンモナイトと地質時代を億年単位で下って、美しい模様を今も化石で見ることができるアンモナイトは白亜紀の末に恐竜と同様に絶滅している。それから6,500万年たった新生代の第四紀である現在、残念ながら、生息しているのはオウムガイ(うず巻型)のみらしい。それにしても、オウムガイ類は進化の中でどうしてうず巻型に変身したのだろうか。うず巻きになることで、殻の層が重なり合う構造になって強化されるメリットがありそうだが、長いものは、のんびりぷかぷか浮かんでいるのに不都合だったのかも知れない。

 

 うず巻きといえば、昔、縁日でよく売られていたおもちゃに、吹くと伸びるおもちゃがあった。竹の吹き口とつぶれて丸まった紙筒からできている。息を吹き込むとピーという音とともに紙筒が伸びて、真っすぐになる。吹くのをやめると先の方からクルッと戻ってきて、元のうず巻き状に戻る。オウムガイも長生きしたためか息が切れて、うず巻き状になったのだろうか。

 

解説ボランティア 福井 正嘉

PAGETOP