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Vol.193 小学生の社会見学

 

 水族館は、娯楽施設であるとともに教育学習に利用できる施設でもある。団体案内ではなかったが、小学校の学習プログラムに参加していた小学生達、全員が首から何かぶらさげている。教材である。各自が館内を廻っていろいろ調べて書くように工夫されているらしい。このような日は、いつもより質問を受ける機会が多くなる。

 先ほど生きている化石のコーナーで話した女生徒が再確認に来た。シーラカンスは「真夏」のクリスマスの頃に発見されたというのが気になったらしい。南半球は季節が逆であることの説明が不足していた。小さな街で真夏に発見されたので、冷蔵・冷凍設備が現代のように十分でなかった当時、1.8m95gもの大きな魚体をそのまま保存するところは無かった。結局、剥製にされている。初めからここまで話せばよかった。

 2年生という男の子が、サンゴ礁水槽前で先ほどからしゃがみこんで、砂から頭を10cmほど出しているチンアナゴとにらめっこ状態である。友達は行ってしまったのに一人何か考えている様子。聞いてみると、チンアナゴは毎日どんな生活をしているのかということを、最後の4行ほどの空欄に埋めたいということだった。そうか、そんなことが知りたかったのかと 気付かされた。それまでに、チンアナゴの名前の由来や、長さが30cmほどもあるとか、プランクトンを食べているとか、図鑑的知識のような内容を話していたが、子供の目線、知りたいことは少し違っていた。彼は、ゆらりゆらりしているチンアナゴを眺め、その1日の生活を想像していたのかも知れない。目からウロコである。

 春、秋は団体案内の申込みが多くなる季節、大人のグループもあるが、毎年定期的にみえる幼稚園や小学校もある。子供達は到着後、挨拶、班分け、トイレの確認 全員記念写真等々で、時には案内時間が切迫、1時間の予定が正味40分ほどになってしまう。 学校にはそれぞれ校風の様なものがあるようで、おまかせ自由奔放型があれば、前記のようながっちり事前準備型もある。前者の傾向として、自分の声が聞きにくいほどの子供達の声、声、声の質問が同時に発せられる。答えても、答えても質問は続くこともしばしば。

 後者の場合は、歩きながら書くには子供には大きすぎると思われる社会見学学習帳を準備している学校があった。マンボウ水槽前で、「マンボウは、3億個も卵を産みます」と言えば、子供達は一斉にメモを取り始める。世界最小の河豚:アベニーパッファー前でも同様、1人が書き始めると全員が同じように始める。メモを取るのに一生懸命のため、心なしか質問が少ないように感じるが、人の話を聞きメモを取るという学習にもなっているのではないだろうか。

 昨秋、団体案内した小学校の子供達からサンキューレターが届いた。

 「しゃかいけんがくに、行ったときいろいろクイズとか、魚の名前をおしえてくれて、ありがとうございました。おかげで、べんきょうになりました。あと、(クイズで)お魚はかせになりました。こんど、おとうさんと、おかさんが、おやすみの日に、(海響館へ)いこうと思っています。でも、もしかしたらシーモールにいくかもしれません。でも、なるべく、ぼくが、すいぞっかんにいきたいといいます。」

 ありがとう、また来て勉強し、将来本当のお魚博士になってください。帰りにシーモールにも行けますよ。

 

解説ボランティア 福井 正嘉

 

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