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Vol.183 快説ボランティア

 

 自動翻訳 パソコンにはこの機能が付いている。先日からこの機能が、頼みもしないのに勝手に働くので困った。ウエブサイトを見るたびに、何処からともなく風のごとく突然現れ邪魔をする。何とか止めさせることが出来たが、本当におせっかいなパソコンである。勝手に翻訳してやると言わんばかりである。その上、どこかの国の総理だった人のように「言語明瞭、意味不明」の翻訳が多いのも困ったものである。

 

 解説ボランティアを、展示品を解説するということでインタープリター(通訳者)といわれることがある。最近は、「通訳者」の他に自然と人との「仲介」となって自然解説を行う人という意味合いも含まれているらしい。先日研修で訪れた屋外での対応が多い島根の自然館でも使われていたが、水族館でもそのように呼ばれているところがある。この単語、個人的には、言語通訳などのように、ある国の言葉を正確に私見は入れず、別の国の言葉に変換していく人(いわゆる通訳)という印象が強いので、水族館などでの解説ボランティアの役目は少し違うようで、何となく違和感がある。水族館では、自分の考えや感想を話すことは勿論、幼児、子供、学生、成人、シニアー、個人か団体か、男性か女性か、どこから来られたかなどなど、その時の状況で話題や話し方など臨機応変な対応が求められる。来館者の外見から年齢を、話し方から出身地を、話題からどこに関心があるのか等々想像しながら解説を進めることになる。

 

 米国では、美術館や博物館の解説ガイドのことをドーセント(docent)と呼ぶらしいが、日本でも「東京動物園ボランティアーズ」ではこの言葉が使われている。水族館はこちらに近いのだろうか。観光業界ではコンシェルジュというのも最近の流行なのか、京都案内コンシェルジュというのもウエブサイトに出ていた。もとのフランス語の意味から派生的に使われる範囲が広がっているようである。先日ラジオで、ホテルのベテラン女性コンシェルジュが、米国からの宿泊者から、知人の日本人の名前だけの情報で、その人に会いたいので探してほしいという要望に何とか応えたといった苦労話をされていたが、Never say noがモットーのコンシェルジュとはいえ、話題になるほどだから「想定外」だったのだろう。

 

 今年もフグシーズン真っ只中であるが、海響館でもトラフグ水槽前で、高級フグ料理店へ紹介状を書いてほしいと依頼されたことがあった。私の紹介状などサービスに何のメリットもありませんよと言って、店の場所だけを2,3軒お知らせした。しかし、「フグをこれだけ展示している水族館のトラフグ解説者の紹介なら安く提供されるはず」と何度も言われて困った。紹介状を書くことまでは「想定外」であった。呼称が、水族館解説コンシエルジュだったら断れたかどうか?欧米なら、こんな時、即座にそれは私のテリトリーではありませんとなるのではないかと思われるが、「お客様は神様」のこの国ではそうも行かないこともある。この機会に、高級フグ料理店に何度も通って、自信をもって紹介状が書ける様になればよいのだが、未だ実現していない。

 

 それにしても、インタープリター、ドーセント、コンシェルジュは何れも横文字だが、同様に横文字で、料理とワインを最高に楽しむためのアドバイザーはソムリエといわれる。水族館を最高に楽しむためのアドバイザーに何か活動内容に見合った肩がこらない呼び方はないものかと、わがパソコンに問うてみた。変換キーを押すと「快説ボランティア」とのたまった。持ち主に似たのか相変わらず「言語明瞭、意味不明」だが、まさか、こちらの気持ちを汲んで「楽しむ」を「快」と解釈したわけではないだろう。

 

(解説ボランティア 福井正嘉)

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