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Vol.178 アンギラ

 

 昨年、男子サッカーW杯で一躍その名を馳せたタコのパウル君、今度は女子サッカーW杯で2代目を探しているらしい。柳の下はドジョウかと思ったら、所変わればタコになるから面白い。6月後半になると半夏生の花の便りが届き始める。タコといえば、7月2日は半夏生。タコには受難の日でもある。タコを食べると暑さに効果があるのだろうか。

 夏バテにはやはり万葉の昔からのウナギ、今年は特に節電・省エネで厳しい夏が予想される。ピラルクがいる熱帯雨林水槽の水温が25℃前後なのに、現実の関門海峡の水温が30℃近くにもなった昨夏のような猛暑ではウナギを何匹食べても追いつかない。そのウナギ、今年は早々と値上がりが報道されている。養殖ウナギは昨年比30%もアップするらしい。文字通り「ウナギ登り」だ。厳しいのは人間だけではない。今年はそのウナギにとっても受難の年。土用の丑の日が2回(7/218/2)もある。うなぎ屋さんはニコニコかも知れない。

 

 ところで、どうゆうわけか養殖ウナギのほとんどがオスだそうだ。天然ウナギは少ないから、うな重も、うな丼もほとんどオスと言うことになる。ウナギは、全長30cm前後まで性が決まっていない。養殖場でオスの割合が高くなる要因があるのだろうか、促成栽培によるストレスではないかという見方もあるらしい。夏の土用に食することが多いウナギの旬は、意外にも秋だそうだ。このころには脂がのって胸のあたりが黄色くなるらしい。胸が黄色で「胸黄」「むねぎ」「うなぎ」となったとか。真偽のほどは知らない。昨今は「土用の丑の日」の発案者平賀源内の時代と違い、この日だけに限らず通年売られている。値上がり激しい土用の丑の日を避け、秋に脂がのって美味しい「むねぎ」のうなぎを食べた方がよさそうである。ウナギの食べ方は蒲焼が一般的だが、柳川のせいろ蒸しも良い。蒸すことで脂分が調整されるのだろう。ニホンウナギの学名は「アンギラ・ジャポニカ」で適度に脂がのっている雰囲気だが、大西洋出身のヨーロッパウナギの方は「アンギラ・アンギラ」とギラギラと脂っぽい字面である。実際のところ味はどうなのだろうか。ウナギの刺身は聞いたことがない。調べてみるとウナギの血液には、何とかトキシンという毒素があるらしい。やはり火を通さないとピーポー・ピーポーと救急車のお世話になることになる。

 

 一昨年、天然のニホンウナギの卵がマリアナ諸島沖で初めて発見された。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「ウナギは泥より生ずる」と信じていたらしいが、これから謎の多かったウナギの生態が明らかになってくることが期待される。先日、ニホンウナギ産卵場を突き止めた研究者がラジオの対談で話されていた。ウナギの祖先は、今のような大旅行をしていなかった。産卵場所が何百万年の間に遠くなったと考えられている。何故あんなに遠いところまでと疑問に思っていたが、なるほど、眼からウロコである。卵の採取も大変な作業のようである。ウナギの卵は透明で直径1.6mm。 網目0.5mm、直径3mのプランクトンネットを100回前後引き、DNA鑑定でやっと31粒がニホンウナギと確認された。水深160mのところからの採取だったそうである。受精後、孵化するまで1日半と非常に短い。卵の状態で漂う期間がこんなに短いので採取が難しかったのだろう。産卵は新月の前後に多数が同期して産卵するとか。6月の大潮時に、光市室積海岸で集団産卵するクサフグに似ているが、暗黒の新月に産卵することで生存率を高める工夫をしているのだろうか。不思議なことばかりである。今回、養殖の為のデーターがいろいろ得られたといわれていたが、クロマグロのように、完全養殖のウナギが食卓に並ぶのはまだ先のことらしい。

 

 女子サッカーW杯は6月下旬ドイツで始まった。さてパウル君の2代目の成績は如何?

 

(解説ボランティア 福井正嘉)

 

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