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vol.246 ニイハオ

 関門海峡潮流水槽は、名前の通り地域の特徴を生かし水の動きも見せるユニークな展示水槽である。開館当初からこの水槽の人工潮流(約1m/s)の真っただ中を好んで(?)泳ぐフグの仲間がいる。「シマフグ」(縞河豚)である。

 フグ目は、マンボウ科、ハリセンボン科など10科に分かれている。特に、いわゆる毒を持つものが多いフグ科の仲間は見分けるのが難しいのがいる。ヒガンフグ、コモンフグ、ショウサイフグなど何度覚えても間違える。そんな中で、このシマフグは斜めのストライプ模様とヒレが黄色なところが印象的で一度覚えると間違えることはない。

 

 トラフグなどフグの仲間は尾ビレでなく背ビレと尻ビレで泳ぎ、その為か魚にしてはあまり俊敏な泳ぎは見られないが、シマフグは別格である。

 手元の図鑑によると、シマフグは体に似合わず素早く泳ぎ、フグの仲間では遊泳力があるのだそうだ。図鑑の通りである。

 

 このシマフグを若い夫妻と思しき来館者が先ほどから、スマホのカメラで盛ん追いかけている。潮流に乗って流されたと思うと、今度は流れに逆らって遡上してくる。スマホを持った女性はそれにフォローして右に行ったり左に行ったりと忙しい。よほど、この魚と波長が合ったのだろう。

 

 潮流の方向が反転するほんの一時、流れが止まり水面から波立ちが消える。しばらく、静かになった水面を凝視していると、左手前に渦潮が発生する兆しが見えた。フグの識別は難しいが、この渦潮の発生の瞬間は何十回も体験しているので自信を持って事前に来館者に伝えることが出来る。

 体験上、発生してからより、まだ影も形もない直前に伝え、まさに誕生の瞬間を見ていただく方が来館者の反応は大きいのである。

 

 急いで少し離れたところの上記の夫妻の男性に伝えたのだが、どうも様子が違う。こちらの話していることが伝わっていないように感じた。女性と何か小声で話し合っているがよく聞き取れない。もしかして中国からの来館者? 外見からはまったく気が付かなかった。そうこうしている間に、何もないところから小さな渦潮がだんだん大きくソフトクリームのコーンの様に成長してきた。

 

 やっと事の次第が分かったのだろう。女性はスマホを渦潮に向け始めた。突然男性が話しかけてきた。片言の日本語だったが何とか理解できる内容である。最初に上手く伝わらなかったので少し驚いたが安心した。彼は渦潮がどうして出来るのかを知りたかったようである。「ポンプで・・・」と言いかけるとすぐに理解できた表情。

 

 中国は上海から来たと言われていた。上海の「上海海洋水族館」は155mの長い海底トンネルがあると聞いているので一度行って見たいと話すと、水族館の前の海(河?)は海響館のようにきれいではないということだった。

 話題が突然環境問題に飛んだ。よほど汚染されているのだろう。取水に問題はないのだろうか。調べてみると、黄浦江というこの河は幅400m水深9mで汚染がひどいらしい。後で、海響館の中国語と英語のパンフレットをお渡ししておいた。  再見!

解説ボランティア:唐櫃 山人

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