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vol.244 メダカの反応

 

 「・・・~!」無言で男の子がニヤリと満面の笑み、するとお父さんがどれどれと、続いてお母さんも。結局3人が続けて釣りあげた。先日のキッズフェスタでのメダカ釣りの一幕。 海釣りをしていても、時合になるとこんなことは起こるものだ。

 

 メダカといえば、向井千秋宇宙飛行士が宇宙でメダカの繁殖実験を行ない話題になった。15日間宇宙旅行したのは、クロメダカでなく改良品種のヒメダカ4尾(オス、メス各2尾)。

 宇宙酔いに強いのが選ばれたという。地球に戻って来たメダカは産卵を続け、ふ化した仔魚はその後も成長し1,300匹余に増え多くの小中学校等へ配布されニュースになった。

 

 20数年前、オープン直後の「世界のメダカ館」を見学したことがあった。ヨツメウオなども展示されていたが、メダカの種類が多いことを初めて知った。宇宙メダカの影響もあって人気があったのではないだろうか。

 

 毎年、行われているキッズフェスタの展示の一つに、今年は「海の不思議実験&観察」が計画された。海藻や魚などは不思議な現象や行動がよく見られる。ワカメやヒジキを熱すると緑色に変化することや、本館のサンゴ水槽の擬岩下の空間にはいろんな魚達が上下逆さまに泳ぐ不思議なスポットがあることなどもその一例である。

 

 「魚の不思議」の準備段階では、周辺の色や明るさなど環境の変化で体色がかわるヒラメ、メダカなどで実験を試みたが、急ごしらえの実験環境だったこともあり、何れも子供達が理解できるほどのはっきりした変化が期待できなかった。

 

 そこで、視点を変えて環境に対する魚の行動の変化・反応を観ることにした。魚が水流に逆らって泳ぐ姿は、よく見られることだが、それを再現し、更にメダカが泳ぐ小さな円形水槽の外側周囲の景色(斜しま模様)を回転させメダカの追従反応を見る展示を準備した。

 いわゆる、魚が一定の場所にとどまろうとする定位行動の体験である。試行段階でメダカは素早く反応してくれたのは意外であった。回転方向を変えると実に忠実にそれ~っと方向転換してくれる。面白い。これなら子供達にも楽しんでもらえそうだ。

 

 フェスタ当日朝、新たに届いたばかりのヒメダカを水温調整後、円形水槽にセットした。宇宙に行ったのと同じ種類のメダカである。おもむろに外側周囲の景色を右回転させると、それまでバラバラに泳いでいた大小30尾ほどの群れが一斉に右に旋回し始めたので一安心。

 ところが、よく観ると突然他より一回り大きい1尾が逆走を始めた。右に旋回しているヒメダカの群れの間隙を縫うように猛スピードで左旋回している。高齢者の高速道路の逆走が大きな社会問題になっているが、メダカの社会にも広がったのか?

 

 メダカの目は、身体の大きさに比べてずいぶん大きい。更に一般の魚には胴部の両側面にある側線が胴部ではなく、目の周囲にある。脳に近いところに感覚器官が集中しているので、外敵の接近に素早く対応できるのだそうだ。その為かどうか、逆走してもメダカは人間の様に衝突事故を起こすことはなかったのだが、先発メンバーから除いて別の水槽で活躍してもらうことにした。

 早朝からの移動がストレスになったのだろうか? 5日前のリハーサルでのメダカ達には見られなかった反応である。

 

 メダカは水槽内だけでなく、水槽の外の景色もよく見ていることを子供達に実感してもらうために別の水槽に30尾ほどのヒメダカを泳がせ、ガラスの外側でテグスに吊り下げた赤いビーズをゆらりゆらりと上下左右に揺らせることにした。

 心地良いと感じる自然のリズムで揺らすとよく追従してくるらしい。

 最近の扇風機は、一定の風でなく風のゆらぎを売りにしているようだが、どのような揺れにするとメダカが最もよくついてくるのか子供が体験しながら探すことを期待した。当日は、ゆっくり動かす子供、セッカチに揺らす子供、メダカのフォローはそれなりの結果になった。

 

 最後は同じ水槽でメダカ釣りだ。

 メダカ釣りのルールは、メダカに針を掛けてはいけないし、メダカに触ってもいけないのだそうだ。そして身体が水面を切って空中に上がれば、針がかかっていないので自重ですぐに落下する。これで釣れたことになる。

 

 実は準備の段階では、当日の朝まで1尾も釣ることができなかった。子供達が来る直前まで、何度もトライに次ぐトライ・トライ・トライでやっと1尾が釣り上がった。まさに一瞬のことで、気が付けばポチョンと水中へ。

 エサの付け方に問題があったようだ。

 けれども、これで準備した仕掛けで釣れることがわかったので子供達に安心して提供できるとほっとした。エサは、冷凍赤ムシ(ユスリカの幼生)を使った。

 

 午前中、2時間ほどのショータイムだったが、昼前にはエサ付け作業が忙しくなってきた。一時は順番待ちができるほどの子供達が参加してくれたのだが、午後の当たりは急激に落ちた。釣果は12尾だった。

 今年の地元高校入試の理科に、今回実験したような刺激を与えた時のメダカの反応に関する設問があったことを後で知った。

解説ボランティア:唐櫃 山人

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