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Vol.206 巨大化する水族館

 

 年の初め、ペンギン村の水中トンネルを出たところで 偶然若い女性の二人づれに出くわした。はるばるアメリカ東海岸はジョージア州アトランタからの来館者である。ヴァケーションで来日したという。

 その昔、ヴィ・エイ・スィー・エイ・ティ・アイ・オゥ・エンとコニーフランシスが弾けるような声で歌っていたが、Sight seeingや、Holidayでなく、米国人らしくVacationで来たというところでこの歌を思い出した。それにしても、この時期に、極東の、この下関にどうしてと疑問がわいたが、そこまで立ち入るのは如何かと思いとどまった。  

 ジョージアといえば、中学か高校のころに見たジョージア州を舞台にした映画「風と共に去りぬ」や、「南北戦争の地」のイメージが浮かぶぐらいだったが、最近はアトランタ五輪や、世界最大級の水槽を持つ「ジョージア水族館」が加わった。海響館より4年ほどあとに開館している。彼女たちは、控えめながら当然のことのようにこの水族館の話を始めた。巨大なマンタやホエールシャーク(ジンベエザメ)がいることや、水中トンネルが非常に長いことなど誇らしげだった。  

 今まで、また大きな水族館が出来たぐらいの関心しかなかったが、彼女たちの影響でこの機会にもう少し知りたくなった。このようなことはよくあることで、来館者からの質問に刺激を受けて調べているうちにそうだったのかと教えられることが何度もあった。ウエブサイトによると、水中トンネルは確かに長い。30mもあり、その水槽の規模も巨大である。約22,000トンで海響館の全展示水槽の約7倍、変な例えだが、近くの有名な湯田温泉の全湧水量給水しても10日以上もかかる。  

 先日、タイムリーというか、TV番組「世界水族館ものがたり」で最古の現役水族館であるナポリ水族館や、モナコ海洋博物館、米国のモントレーベイ水族館など、いつも何かと話題が多いこれらの有名水族館とともに、このジョージア水族館が世界最大級の水族館として紹介されていた。番組では、水槽の大きさを小学校25mプールの約68杯分と表現していた。ホエールシャークへの給餌は、水槽に浮かんでゆっくり移動するボートからのオキアミを与えていたが、その水面の広さには驚かされた。東海岸とはいえ、大西洋から300km以上もあり、内陸の水族館でよくあるように、海水は人工海水が使われている。

 水族館はどこまで巨大化するのだろうか、水上スキーショーもできる水族館「シーワールド・フロリダ」はすぐ南隣の州である。競い合っているようだ。これだけ水量が多いと、魚により異なる水槽の温度を維持するエネルギーはどうしているのだろう。アトランタ市は、姉妹都市の福岡市とほぼ同緯度だから、沖縄美ら海水族館のように海の温度が冬でも19 ℃以上あるところと違い、水槽の海水は、水生生物に適した温度に加熱・冷却する膨大なエネルギーが必要だろう。

 ボランティアの数も1,500人というから半端ではない。さすがにボランティア先進国である。参加するには、事務手数料$60(約¥6,000)が必要で、4時間シフト制、年間100時間の活動が条件とある。満たされなかった場合は、次年度ボランティアを継続する場合は、更に$60の支払いが求められている。隣州のフロリダ水族館でも同じような活動条件なので、アメリカの水族館ボランティアはこのような環境で活動しているのが一般的なのだろうか。

 ジョージアからの彼女たちのおかげで、いろいろ知ることができた。それにしても、上には上があるものだ。上海海洋水族館の水中トンネルは155mもあったと観覧した家族から聞いた。

 

解説ボランティア : 唐櫃 山人

 

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