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Vol.202 カンモン・アイ

 

 観覧車:「ロンドン・アイ」(London Eye)はテムズ川に沿って建てられていて、高さ135mの巨大なサークルの存在は周りの建物を小さく見せている。川を挟んでビッグベンの斜め向いで、驚いたことにロンドン水族館はお隣さんである。建設から10年余のこのロンドン・アイも先輩のニューヨークの自由の女神やパリのエッフェル塔のように、その都市を代表するような存在になるのかも知れない。

 先月、関門海峡にも大きな目玉:観覧車が出現した。この観覧車、水族館に隣接しているところは「ロンドン・アイ」とそっくりである。似ているついでに、愛称を英国風に「カンモン・アイ」とすると語感も何となく似てくる。サイズは約半分の高さ60mだが、「カンモン・アイ」には小さくても「関門愛」の響もあると自画自賛。海峡ゆめタワーには、「夢」が入っているが、こちらは「愛」である。

 中秋の名月、観月会の帰路に近くまで行ってみた。大きい。「ジャイアント・アイ」だ。既に閉園していたが、園内はイルミネーシヨンが点灯したままで静まりかえっている。レインボーのように変わるライトは、月見のあとの目にはまぶしい。その横を5~6人のジョギング中の人たちが通りすぎた。秋の海峡マラソンを目指している人達だろうか。

 この観覧車、開園したアミューズメント施設の中核になる目玉で、その形も正に目玉である。遊具は、この目玉の他にコースターやメリーゴーラウンド、回転しながら傾斜し、段々と高くなっていくブランコのようなものがあるようだ。以前、正月頃だったか海響館にきた小学生から、ジェットコースターはないのと質問があったことを思い出した。少しはにかみながらの質問だったが、今度は、いろいろ面白い遊具がお隣にあるよと返事ができそうである。

 30年ほど前の旧下関水族館時代にも隣接するマリンランド(現在は関門医療センター)に一時期、観覧車が動いていた。歴史は繰り返されるようで、これから観覧車は水族館を見下ろしながらまたクルリクルリと廻り続けることだろう。海響館には、深海艇:しんかい6500のパネルや深海の魚の展示コーナーがある。偶然だろうか、深い海から空中遊覧まで体験できる施設が、すぐ近くに共存することになった。ヨットハーバーと水族館の組み合わせはあちらこちらで見てきたが、観覧車との組み合わせは気が付かなかった。

 他にも、水族館と観覧車の取り合わせ、確かどこかで見たような気がしたのだが、思い出せない。と書いたところで思い出した。東京葛西臨海水族園だ。時々、物忘れ防止対策と称して、昨日の夕餉(ゆうげ)の内容は何だったかを翌朝に思い出す訓練をしている効果が出てきた?そんなもの対策にならないと一笑に付されそうだが、プラセーボ(偽薬)と同じで、ひょっとして効果があるかも知れないと期待しているのだが、・・・・。

 最近、国内外の豪華クルーズ客船が海峡を通過するのをときどき見かける。これらの船や、門司側から海峡を隔てて眺めるとランドマークがまた一つ増えたことになる。駅前の海峡ゆめタワー(高さ153m)は垂直、海響館は水平、そして今回は観覧車の円形が加わった。そのシルエットは、垂直:タチウオ 水平:スナメリなど鯨類 円形:マンボウ(ふぐの仲間)と想像すると、どれも海響館で展示されていたり、当地を代表する魚類や海獣たちであったりする。

 観覧車を円形のマンボウに因んだ愛称を望むなら、「モーラモーラ」も一案である。マンボウの学名「Mora mora」はラテン語で「挽き臼」の意味らしいが、泳ぎが上手くないマンボウのモタモタとした動きと、挽き臼がゆっくりと回る情景が見える響がある。何億年も生き抜いてきた「生きている化石」と呼ばれる生物は、シーラカンスにしろ、カブトガニにしろ概して動きが緩慢のものが多い。マンボウは、あの巨体で海面上までジャンプし、時速9kmの実力もあるのに水槽内では、ゆったり旋回している。同じくゆっくり廻り続ける観覧車と相通じるところがあるのではないだろうか。

 期せずして先月その詳細が発表されたリニアー新幹線は速いほど喜ばれる乗り物だが、観覧車はゆっくりの方が似合う乗り物である。マンボウも遊園池でボートが進むような動きをしている時がマンボウらしい。

 スペイン、フランスなどヨーロッパの国々では、マンボウを「月の魚」と呼んでいるところが多い。所変わればだが、日本でもゆっくりと門司の和布刈山の端に登ってきた大きな中秋の名月に、ススキの穂の背ビレと臀ビレを上下に想像すれば正にマンボウである。

 炎暑の夏も過ぎ、秋の行楽シーズンのこれからは、開演時間を初め、遊具の種類、利用料などなど来館者からこのお隣の新施設についてもいろいろ質問を受けることになるだろう。しばらくは、昨日の夕食メニューを思い出す脳の訓練は欠かせない。ところで、昨夕は何だった?うーん、思い出せない。

 解説ボランティア:唐櫃 山人

 

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