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Vol.199 生きていた化石

 

 813日関門海峡東口付近で100mもあろうかと思われる巨大な水柱があがった。イルカのスプラッシュシャワー や、猛暑対策ではない。先の大戦の残骸機雷の水中爆破処理である。化石のような機雷は68年もの間生きていた 。 爆破位置とスナメリ観測海域との位置関係を知るために、熱中症対策をして出かけた。といってもペットボトル1本を持参しただけだが。

 予告報道されていたので、スナメリ定点観測点でもある三軒屋海岸には炎天下大勢の人が見えていた。この海岸 では絶滅が心配されているスナメリを定期的に観察が行われているところで、去る6月、動物愛護賞受賞を記念して 特別観察会が開催されたところでもある。スナメリはほぼ年間を通して視認されているが、特に2~6月ごろの期間は頻繁に現れる。夏場は少し頻度が下がる。それでも、爆破当日にも、付近で視認されている。

 時折、上空にはヘリ2機がまだかまだかと旋回していている。掃海艇が数隻見える。汗が吹き出てくる。そろそろ体力的限界か。10:30 a.m.、水柱は、一瞬だったが2段階あったように見えた。素人判断だが最初は起爆剤によるもの、続いてそれに誘発された機雷そのものによるものと思われる。当然、後者の方が高くまで水柱が伸びた。

 爆破地点の方向は観測海域AゾーンとBゾーンの中間付近であることが分かった。観測位置から約1マイル(1.8km)ほど沖だろうか。スナメリはこの海域付近からも頻繁に出現してくる。海中の様子は窺い知れないが、久しぶりに海響館に行ってスナメリを孫と見て来たといわれるご婦人から、スナメリの安否を気使う言葉がもれた。

 平穏な日常に戻った夕刻、豪華クルーズ客船「パシフィック・ヴィーナス」に続いて「飛鳥」が、爆破海域のすぐ横を何ごともなかったかの如く通過して関門海峡花火大会の会場へと向った。 クルーズ客船「にっぽん丸」も含めて海峡は日本籍クルーズ客船の揃い踏みである。

 戦乱の遺物「機雷」と平和の象徴のような「花火」、「豪華客船」の取り合わせのお盆の入り、地獄の釜が開く時節、関門海峡の海水温度も29.3℃で今年の最高を記録した。前日には、高知の四万十市では気温41℃を記録している。日中は炎暑、爆破の轟音、そして夜は、花火の音が遠くから届く中、どういうわけか詩人金子みすずの「大漁」を思い出した。

 

解説ボランティア:唐櫃 山人

 

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