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Vol.207 スナメリの日 3月19日

 

 最近、日本海の深海魚がマスコミの話題になっている。2月から3月にかけて、リュウグウノツカイ、サケガシラ、ダイオウイカ、ユウレイイカ、ユキフリソデウオなど仙崎、萩、富山など日本海側でたて続けに捕獲されたらしい。
 
地震の前兆?などの噂もちらほら聞かれるようだが、地震と動物の行動に関連して昔からよくいわれるのは上記のような海水魚でなく淡水魚のナマズだ。人間は天変地異が起これば、それを何かに関連づけて納得したい生き物のようである。  

 そんな折、314日深夜、瀬戸内海は伊予灘で睡眠を破る地震が発生した。ずい分長く揺れたような感じだった。どの魚が暴れたのだろうか。先日のキッズフェスタでも展示されたサケガシラは地震魚ともいわれるらしいが、震源から考えて少なくとも淡水魚や深海魚ではなさそうである。気象関係者によると、深海魚が多く発見される原因は、日本海の低水温にあるらしい。海面近くの海水が冷やされ重くなり、深海の水と入れ替わるときに深海魚が海面に押し上げられるというもので、地震とはあまり関係がない。伊予灘の震源地までは100kmほど離れているが、粭島(山口)、姫島(大分)、三崎(愛媛)というトラフク内海物の三大漁場の真っただ中、テトロドトキシン毒でこわもてのトラフグも驚いてお腹を太鼓のように膨らませたことだろう。この地震が大漁につながる前ぶれか、それとも不漁になるのか、フグ漁のシーズンもそろそろ第4コーナーを回り、フグ供養の日も近い。

 地震といえば、多くの日本人犠牲者も出した平成23222日のニュージーランド・クライストチャーチ地震や、311日の東日本大震災などが記憶に新しい。その前の1月には鹿児島県の新燃岳大噴火があった。翌日、三軒屋海岸ではスナメリの大フィーバーが見られた。この時の状況は、あくあはーつ通信Vol.175「スナメリの野外劇」にも記載したが、いつもなら、出現しても瞬間で、見逃すことも多いのに、30分間もの間次々に展開される大フィーバーの最初の体験だったので本当に感動の連続だった。

 2月のクライストチャーチ地震の翌日も、3月の東日本大震災の約1週間後の19日も大フィーバーだった。その翌年も319日に大フィーバー、 昨年の319日はさすがに大フィーバーではなかったが3年連続して出現した。さて今年、4年連続は実現するのか? 出現確率は高いはずである。そんな想像をしていた矢先、今回の伊予灘地震である。マグニチュードもクライストチャーチ地震と似ている。

 実は、2か月ほど前から、知人に319日には出現する、時間帯は15:0016:00の間と宣言していた。19日は伊予灘地震から5日後になる。何だか出現の条件がそろってきたではないか。確信が持てるようになったのは、3月に入って出現し視認できる機会が多くなってきたことである。特に大潮だった前日の18日には大フィーバーも発生していた。それは16時過ぎから突如として始まり10分間あまりも続いた。空はカモメで埋め尽くされ海面はウミウとスナメリが入り乱れて摂餌する。その中にカモメがダイブする。海岸で、テンカチ岩だ、屏風岩だ、いや 第3キリン、青旗ブイ、航路ブイだと方向を示す独特のキーワードが飛び交う。何れも時計でいえば、9時から12時の方向である。海岸から50m付近まで接近するものもいた。とはいえ、翌日19日の時間帯は、過去3回のデーターからの推測だからあまり自信はなかった。干満の時間は毎日30分間ずつほど遅れていくから、明日、今日の16時の潮の状態になるのは16半以降である。

 さて、当日は予測時間帯に余裕をもって14時ごろに海岸に到着するとフィーバーは既に始まっているではないか。遅れると思っていたが逆になった。先に観察していたベテランのJさんによると145分前頃からフィーバーがスタートしていたのだ。
 上空には100羽以上と思われるカモメが乱舞、海面にダイブするものもいる。スナメリは摂餌で右往左往と背中や頭部を見せる。こんな海面が約10分間も続いた。何頭いたのだろうか。時間帯は1時間ほど早まったが、幸運にもスナメリは16時ごろまで断続的に出現し協力?してくれたおかげで針千本飲まされなくて済んだ。来年の出現も期待したいところだが、その前の火山噴火や地震は御免だ。
 館内では2頭のスナメリが今日も多くの来館者の人気を集めている。いずれ319日は「スナメリの日」に制定される日が来るかもしれない。 

 

解説ボランティア:唐櫃 山人

 

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