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Vol.195 さ~て、困った

 

 ロンドンでは、車は日本と同じ左側通行だが、ちょっとドーバー海峡を渡るとそこは右側通行である。沖縄では、返還前は米国式の右側通行だったのが、1978年に左側通行に一夜で変更されている。周到な準備の上になされたのだろう。これが、ある日突然、予告なく変更されたらどうなるだろうか。

 海響館の瀬戸内海水槽のカタクチイワシは、右回り(上から見て)している。していたというのが正しいかも知れない。実は、右回りだったのは昨年の中頃?までのことで、ある日、気が付いたら左回りに変わっていた。開館以来の“事前通告”のない大きな「交通ルール変更」である。それも何ごともなかったかのようにいつものように黙々と旋回している。カタクチイワシは長い間の習慣を変えたらしい。  水流の流れなど環境の変化はなかったと思われるのに、魚の群れに何が起こったのだろうか。海響館の不思議が一つ増えた。今まで国内の水族館で見たイワシ類の群れは、人工的な水流の関係で左に回っていた島根の水族館以外は右回りだった。  一度回りだすと大きな環境の変化がない限り回転方向を変えないと聞いていたので、そのように解説してきたのだが・・・。  例外もあるかもしれないが、動物が関係すると競馬などのように右回りで、逆に人間は、運動会、野球、競輪など左回りの傾向があるようで、それでイワシは右回りなのだと理解していた。  いつだったか、イワシの群れは南半球では逆に回るのではといわれる来館者がおられた。海流は、南北半球でその循環方向が異なるが、魚群はどうだろうか。海流は北半球では、太平洋、大西洋では常に右回りだが、やはり例外もある。インド洋では、循環せず季節によって逆転するらしい。来館者がいわれることもありうるかもと思ったが、今回、それではないことが期せずして証明されたことになる。これは例外なのか、よくあることなのか。

 以前にもこの欄に書いたが、学者によるとイワシには右利きと左利きがあり、しかも左利きに比べ右利きが多い。イワシの右利きが多いのは、イワシの体をまげるための筋肉の付け根が多くの場合右に片寄っているために、かれらの体はとにかく右に曲がり易く、その結果として泳ぐと右まわりが多くあらわれるそうである。    展示水槽の群れには、2~3ヶ月毎に7~8千尾が補充されるので、たまたま新入りは左回りが得意で、海響館のカタクチイワシの群れは右利きが少数派になったのかもしれない。  想像の域をでない理由はともかく、自然界では我々の理解を超えるルールがあるようだ。解説内容の練り直しが必要になった。

 

解説ボランティア 福井 正嘉

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