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vol.256 どうして・・・?


どうして、クラゲにウロコや骨がないの?
どうして、カメの背中のヒビ割れは出来たの?
どうして、カブトガニのメスがオスをおんぶしているの?
どうして、フグはふくれるの?
このような質問が幼稚園児から出てきたら何と答えたらよいのだろうか。実は、伝説や童話の世界にはこれらに面白く示唆に富んだ回答が準備されていた。
その1 ※1
竜宮城の門番のクラゲは、大王様が、娘の病の治療にサルの生き胆をとる秘密をうっかり独り言で当のサルに聞かれたため、怒った大王様が門番のクラゲの骨もウロコも剥ぎ追放した。
一方、サルに秘密が漏れたとは知らずに、自分の胆を柿の木に干してきたのを忘れたと嘘をついて取りに帰ったサルを連れ戻しに来たカメに、サルが木の上から柿を投げつけた ため、カメの背中にヒビ割れができたという。
その2(中国の福建省地方に古くから伝わる伝説) ※2
盗賊に島へ連れ去られた正直者の夫を助けに行った妻が、夫を背負い、海面上を歩いて帰ることが出来る能力を仏から、他言しないことを条件に与えられた。
帰路、夫からどうして海面を歩けるのかと何度も聞かれ、つい話してしまった妻は、夫を背負ったまま海底に沈んでしまい、そのままカブトガニに変身してしまった。だから、カブトガニは今でも夫婦仲良く妻が夫を背負っているのだという。
その3 ※3
フグが膨れる理由については、いわゆる専門家の間では色々いわれている。自分を大きく見せて敵を驚かせ身を守るというのが一般的定説?のようだ。一方、童話の世界では、フグは人間の怒りを吸い取って膨れているという、そのため、人の世界は平和で幸福になったというのである。下関で言われる河豚(フグ)を福(フク)と呼ぶことに話がつながってくる。
結果的には、フグを増やせば世の中から争いが無くなる?ということになるが、未だに人間社会に争いが絶えないのは、怒りを吸い取って膨れるフグが足りないのかも知れない。落語の堪忍袋のような役割に似ているが、あまり詰め込むと緒が切れて大変なことになる。いや、昨今の世界をみると、もう緒が切れているのかのような状況だ。
人類には争いのない時代はあったのだろうか。平和な時代はフグに頼るしかないのか?エジプトのヒエログリフに描かれた膨れたフグは、不平不満を意味するのだそうだが、相当怒りを呑み込んでいるようで、やはり数多くの争いがあったのだろう。
幼稚園児の団体案内中「どうして・・?」に、このような話題を話すことは時間的に余裕がないが、実際には、上記のような質問を経験したことは今までのところなかった。これは、童話や伝説にこのようなものがありますという大人向きの話題かもしれない。
解説ボランティア:唐櫃 山人
参考:※1ワンダー民話館 片岡輝著 世界文化社
※2カブトガニの不思議 岩波書店
※3作:住友康子 絵:なかはらかぜ 山口県ふるさとづくり県民会議