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天然記念物のウンチの島へ

 海響館のペンギン展示施設にあるフンボルトペンギン特別保護区の展示解説に「グアノ層」があります。グアノ層とは海鳥たちが長い年月をかけて生活し続けることによって、海鳥のウンチや死体が積み重なってできた地層です。ウンチに死体と聞くとなんだかちょっと臭そうで、汚そうで、あまり良い印象がないかもしれません。しかし、このグアノは良い肥料になるため、採掘されることがあります。実際にフンボルトペンギンの生息するチリやペルーではかつてグアノが大量に採掘され、フンボルトペンギンの繁殖地が減少し、その結果フンボルトペンギンは絶滅の危機に瀕しています。

 

 

 そんなグアノが、なんとこの下関でも肥料として使うため、かつて採掘されていたそうです。現在は、国指定の文化財「壁島のウ飛来地」として天然記念物に指定されています。今回、この壁島のグアノの堆積状態について調査を行う機会を得たので紹介します。調査は壁島が天然記念物であるため、島の所有者である国と文化財を管理する市の許可を得て、下関市の文化財保護課職員の立ち合いのもと行いました。

 

 

 目的の壁島は下関市豊北町にある和久漁港から北西へ450mの場所にあります。調査道具をメッシュの袋と発砲スチロールに入れていざ出発!

 

 島へは泳いで渡りました。島が近づくにつれ海鳥のウンチ(正確には尿酸なので尿)で岩肌が白くなった様子が鮮明に見えてきました。目の前にある島は想像していた以上に断崖絶壁で上陸を拒むという表現がぴったりの形をしています。さすがに450mも泳いで来て、簡単に引き返すわけにもいかず、上陸できそうな場所を探すことにしました。島の周りを半周すると、少し傾斜が緩い箇所が見つかりなんとか上陸することができました。

 

 

 島への上陸前は、グアノが島を覆いつくしているのでは?と想像していました。しかし、実際の堆積物は島を成す岩盤のくぼみと思われる部分に堆積しているという状態で想像より少ない印象でした。では、実際にどれくらいグアノが堆積しているのか?16か所を計測すると1㎝に満たない厚さから25㎝を超える厚さまで地形の形状に合わせ様々でした。この結果からグアノが昔から変わらないのか、それとも近年減ったのか、明確には分かりませんが、くぼ地を埋めるような堆積の様子から個人的には風雨の影響が少なくないと考えられ、今も昔もそれほど大きく変わらないのではと思います。

 

 

 堆積したグアノの厚さを調べていると、地表に何かが落ちていることに気が付きました。それは、鳥の羽毛やペリット(鳥が消化せず吐き出したもの)と考えられる魚の骨や耳石などです。ウンチ以外にこういったものからも、ウミウがまさにこの場所で暮らしているということを実感することができました。

 

 

 これで終了と言いたいところですが、水族館スタッフとしては、まだ気になるところがあります。それは、肥料にもなる栄養豊かなグアノが風雨により流れ出る海の中です。そこにはアラメ(コンブの仲間)が繁茂していました。きっとこの海藻は海鳥の排出したウンチの一部を栄養として繁茂し、海のゆりかごと呼ばれる藻場を形成しているのでしょう。そして藻場(ゆりかご)を通して魚を育み、また海鳥を育んでいるのです。

 

 

 ウンチってなんだか重要なものの気がしてきました、海響館では、令和4年7月2日から10月30日まで特別企画展「ミラクルうんちワールド! in 海響館」を開催中です!

 

魚類展示課 久志本鉄平

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