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南の島のフグを求めて

お魚探検隊、隊員の久志本です。展示生物を集めるために活魚車に乗り各地へ行きます。今回は南の島「与論島」での収集の話です。

与論島は沖縄本島が見えるほどの位置にある鹿児島県奄美群島の島の一つです。鹿児島港までは陸路で移動し、鹿児島港から与論島まではフェリーで向かいます。鹿児島港を夕方に出港し、翌朝には奄美大島を通過、昼に与論島に到着します。フェリーから見る海の色が下関の海の色とはまるで違い、深く青い海が印象的で、南の海に来たのだなぁと感じました。与論島到着後は空港へ向かい記念撮影!というのは冗談で、飛行機で移動した上司を迎えに行きました。

与論島での収集の目的はもちろんフグ!下関では入手できない南の海にすむフグの収集です。現地で漁師さんと打ち合わせを行い、事前に集めていただいていたフグ類の確認を行います。自然の海を仕切った生け簀には下関では採集できないフグがたくさん泳ぎ回り、たくさんのフグを持ち帰ることができる嬉しさがこみ上げたのですが、よく見ると泳いでいる多くのフグはモンガラの仲間でした。モンガラの仲間は、フグの仲間の中でも気性が荒く、他の魚を攻撃する可能性がある魚です。私自身、以前に繁殖期の70㎝を超えそうな巨大なゴマモンガラに水中で襲われた経験があり、目の前のたくさんのモンガラの仲間はうれしい反面、悩ましくもありました。

この生け簀にいるだけでも、十分すぎるほどのフグがいるのですが、小型のフグは私たちが、採集道具を手に与論島の海に潜り採集を行いました。与論島の海は、サンゴの海!色鮮やかな小さな魚がサンゴの周りに集まっています。こんなカラフルな色で外敵に襲われないの?と思ってしまいますが、複雑なサンゴの形は小さな魚が身を守るシェルターとなっていて、むしろ様々な多くの魚がいる中ではお互いを見分けるために、カラフルな模様は大切なのかな?とも思えます。

また、分断色的でカモフラージュによいのかもしれません。そんな環境のなかで、小さなフグであるキンチャクフグの仲間を探しました。フグと言えば泳ぎが遅く捕まえるのも簡単そうですが、、、小さな体のため、サンゴや岩陰に隠れるとなかなか捕まえることが難しい、、、、そこで狭い場所にも入る通称「エビ網」と呼ばれるテナガエビなどを捕まえる網を使ったのですが、時期的な問題か、、、キンチャクフグ自体をなかなか見つけることができず、結局1時間くらいの採集でなんとか5匹を確保しました。

そして出発の日、いよいよ天然の海を仕切った生け簀からの魚の取り上げです。この岩が入り組んだ生け簀からどうやって魚を取り上げるのか少々不安でしたが、与論の漁師さんの完璧な連携プレーにより、手際よく生け簀を網で仕切り、あっという間に魚を捕獲できる状態にしていただきました。ほとんどが比較的気性の荒いモンガラの仲間なので、輸送や搬入、展示後の事を想定し、群れる種類であるアカモンガラを中心に持ち帰る魚を選定し活魚車に積み込みました。

あとは、無事に下関まで魚を運ぶのが私たちの仕事。活魚車に魚を積み込んだ後、取り上げのために少し擦れたりし、粘液が出たりしている可能性もあるため、漁協で海水をもらい水替えして、長時間の移動に備えました。下関までは約26時間(フェリー20時間、陸路6時間)という長旅でしたが、水質が悪くなることもなく、一個体も死亡することなく無事14種54個体のフグの仲間を下関に運ぶことができました。

移動した個体は擦れもなく餌も食べるようになってきたため、いよいよ展示水槽へ移動していきます。賑やかになる展示水槽を想像するとワクワクします!

魚類展示課 久志本鉄平

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