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噂の黄色く四角いあの子

白状します。

私、時々エゴサーチしています。
やはり自分の水槽がどのくらい注目してもらえているのか、どんな風に見られているのか、気になってしまうんですよね。

そんな中、時々見かけるのが「海響館にキスジイトマキフグがいる!」というワード。
正直なところ、マイナーなこの種名が出てくるだけで非常に嬉しいし、その気づきがあることには驚きを隠せません!

ただ、この「キスジイトマキフグ」、合わせて写真を付けてくれていることが多いのですが、
結論から言うと申し訳ありませんが、それは「イトマキフグ」であると私たちは考えています。

私たちが普段魚の種類を調べる時には、魚類検索図鑑というものを使用しています。
この図鑑にはこの魚にはこの様な特徴があるということが細かく記してあります。
そしてその特徴を元に、どの種かを見定める事を同定と言います。

それでは、この図鑑を基にキスジイトマキフグとイトマキフグの同定ポイントを見比べてみましょう。
イトマキフグ:①体を覆う甲板に多くの棘がある ②背鰭は10~13の軟条
キスジイトマキフグ:①体を覆う甲板に棘はなく,平滑 ②背鰭は9~11の軟条
このように書かれています。
ここで少し馴染みの無い用語が出てきましたが、軟条とは魚の鰭の中にある筋、中でも触ったら柔らかいもののことを言います。

これをもとに、当館で飼育中のイトマキフグを見てみましょう。
前後しますが、②の軟条の数から

なんと!背鰭の軟条の本数は10本!イトマキフグとキスジイトマキフグの軟条数のちょうど重なっている数に!
では①の甲板の棘はというと…

あれ?わりとつるっとしていて、棘らしいものは見当たりませんよね?
と言うことはやっぱりキスジイトマキフグなのでは??
では同一個体の以前の写真を見てみましょう!それがこちらです!

背中の中央部分に棘があるのが分かると思います。
実は元々はちゃんとあったのですが、飼育していくうちに削れてしまったというわけです。
実際、棘のあった場所を拡大してみると、

なんとなく痕跡があることが分かりますか?

という訳で、当館にいるのはキスジイトマキフグではなく、イトマキフグと考えています。
胸を踊らせてしまった人には本当に申し訳無い限りです。
キスジイトマキフグは未だに生きた状態で入手することはほとんどなく、まだまだ謎の多い生き物です。海響館でも生きた状態で搬入したのは過去に1度しかありません!

いつかはいきいきとしたキスジイトマキフグを展示してみたいものです。

魚類展示課 飯島卓也

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