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北の国へ〜きれいなキアンコウを求めて 後編〜

前回はきれいなキアンコウを集めるため、青森県の浅虫水族館さんで準備を整えたところまでお話ししましたが、今回はその続きのお話です。

定置網漁の出港は、午前5時30分。浅虫さんからは車で2時間程度かかるため、午前3時30分に集合しました。活魚車へ海水を積み、水温を下げるために大きな氷を投入するお手伝いをして、いざ、出発!朝早いため眠気もありましたが、初めての景色を堪能し、キアンコウとの出合いを楽しみに、あっと言う間に漁港に到着。漁師さんにご挨拶し、無事に出港することができました。

波も穏やかで天候も味方してくれているようです。そして数十分後、漁場に到着。いよいよ網上げです。漁師さんと一緒に息を合わせて徐々に網を上げていきます。すると、網上げもそこそこに茶色くて大きな物体が水面に上がってきました。キアンコウです!よく見るとあっちにもこっちにも…たくさん泳いでいます。これまで山口県の定置網には数多く乗船させてもらいましたが、こんなにキアンコウばかり泳いでいる光景を見たのは初めてでした。

しばし釘付けになってしまいましたが、見惚れている場合ではありません。網を絞り切る前に、できるだけきれいな状態で獲らなければ…と思うより先に流石は浅虫のスタッフさん、すぐにキアンコウを傷つけにくい専用のたも網を漁師さんへ渡します。すると漁師さんが素早く海水と共にキアンコウを網の中へ。連携プレーでやさしく船の生け簀へ運ぶことができました!

その後も同様にして採り続け、計10匹を採集することができました。中には持ち帰られないほどの巨大なキアンコウも獲れていました。
帰港後、やさしく活魚車へ移動させて、再度浅虫水族館さんへ。予備水槽へ搬入させていただき一安心。
ただ、まだ気を抜けません。最後に海響館まで運ぶ任務が待っています。

翌朝、再び浅虫さんにご協力いただき、予備水槽で落ち着いていて傷の少ないキアンコウを選び、運ぶ準備をしました。その方法は酸素パッキングです。簡単にいうと、ビニール袋の半分に海水と生き物を入れ、残りの半分に酸素を満たして密閉する方法で、1日から2日ぐらいは酸欠にならずに生き物を運ぶことができます。ただ、水温や生き物に対するビニール袋の大きさ、海水や酸素の量など、適切に行わないと無事に運べないこともあります。慎重に作業を行い、大型の発泡スチロールに保冷剤と共に入れて梱包。キアンコウを驚かせないようにそーっとレンタカーに積み込みました。そして、一路青森空港へ。

貨物として預ける手続きをしていると、急に天候があやしくなって来ました。台風2号の影響で風が強まり、飛行機が無事に飛べない、もしくは飛んでも別の着陸先や、最悪の場合引き返す可能性があるとのこと。祈るような気持ちで待っていると、出発時間が少し遅くなるが離陸できそうとのこと。一安心し飛行機に乗り込みました。その後も風の影響で中々着陸できないなど紆余曲折ありましたが、何とか海響館まで帰ってくることができました。

ドキドキしながら梱包を解くと、動きは鈍いですが生きている様子。傷つかないように慎重に予備水槽へ。水槽内でゆっくりと呼吸したのを確認して、ようやく肩の荷が降りました。

しかし、残念ながらその約1ヶ月半後にすべて死亡してしまいました。尾ビレとアゴのとても小さな傷が徐々に広がり、餌付くまでに至らなかったようです。展示にこぎつけるまでには一筋縄ではいかないことを痛感。

こうして今回のチャレンジは幕を閉じましたが、浅虫水族館の皆様、そして漁師の皆様のお力がなければ成しえないものでした。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました!

水族館同士はこのように、生物の収集協力を行うことがあり、この他にも生物の交換、研究協力などを通して交流をしているんですよ。

次回は、より傷つけないように、時間をかけてでも活魚車の広いスペースで運ぶなど、改良点を模索して再チャレンジしたいと思います!

展示部魚類展示課 石橋將行

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