突然ですが皆さん。フグってかわいくないですか？例えばこちらのハリセンボン。ふっくらとした顔、頭でっかちな体つき、まったりした泳ぎ方。魚と言うより小動物的な可愛さを感じます（感じてください…！）。実はハリセンボン、このかわいらしい姿に関連した興味深いお食事の仕方をするって知っていますか？今回は、ハリセンボンのエサの食べ方のお話です。

★スピード勝負！魚のお食事スタイル
　ハリセンボンのお話の前に質問です。魚たちはどうやってエサを食べるでしょう？魚の仲間の多くは、エサを水ごと吸い込んで食べるんです（金魚がエサを食べるシーンをイメージ！）。

けれど、しっかり噛んで食べなくて大丈夫なのでしょうか。多くの魚たちには、噛まずにエサを捕まえなきゃいけない理由があります。それは、エサに逃げられないため。陸上の生き物のように獲物を捕まえる「腕」がない魚たちは、エサに逃げられないよう、素早く獲物を捕まえる必要があると考えられています。さて、これを踏まえてハリセンボンのエサの食べ方を見てみましょう。

★お行儀悪い！？ハリセンボンのお食事スタイル
ハリセンボンにエサやりをしていると、お客様から「お行儀悪～い！」と言われることがあります。なぜかというと、彼らが口からエサを出し入れしながら食べるから。

確かにお行儀が…笑
こんな悠長に食べていたら、エサに逃げられてしまうのでは？でも大丈夫。彼らは主に動きの遅いエビやカニ、貝の仲間を食べているんです。こんなエサを食べるときは、逃げられる心配より、かたい殻を砕いて食べなければならなさそう。そう、ハリセンボンは口から出し入れしながら、エサをよ～く噛んで食べていたんです。ハリセンボンの仲間が硬いエサを噛み砕いて食べる様子は、迫力満点！

でも、この”硬い装甲”を破壊することは至難の業。そのために、彼らはとっておきの秘密兵器を2つ持っているんです。

★装甲を破壊する秘密兵器！
秘密兵器その1は、大きくて丈夫なアゴ。一見、鳥のクチバシのようにも見えますが、上下のアゴは歯と一体化した上部な骨からなり、とっても硬いです。

この丈夫なアゴを動かすのが秘密兵器その2、アゴを閉じるための巨大な筋肉。こちらはハリセンボンの頭の筋肉を観察した図ですが、黄色い場所はすべてアゴを引き締めるための筋肉。頭のほとんどを覆う巨大な筋肉によって、顎を力強く引き締めます。

★かわいい顔には理由がある
ここでもう一度、ハリセンボンの正面顔を見てみましょう。ふっくらした顔には、エサの装甲を破砕するための骨格や筋肉が詰まっていたのです！さらに、頭が体に対して大きいのも、もしかしたら、獲物を噛み砕くためのアゴや筋肉を大きくするためかもしれません。

彼らが生きるために獲得した形が、私たちの眼にはかわいさとして映る、、、なんだか不思議で素敵なお話ではないでしょうか？
海響館では、現在、3階フグコーナーで特設展示「ズームアップフグの不思議～かわいい！のひ・み・つ～」を開催中。今回ご紹介したような、フグの可愛さの裏側に隠された生きる力に迫っています。ぜひ、展示を見に来てくださいね！

魚類展示課　荻本啓介