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ちびカイカムリ成長記録

皆さんはじめまして、新人スタッフの皆川です。海響館に入る前は大学で魚の研究をしていたのですが、いざ水族館に就職してみたら担当生物にカニがいる!何も知らない!なのに卵産んだぞ!!……ということで、初めてのチビカニ飼育に奮闘し、記録できたカニの赤ちゃんについて皆さんにご紹介していきたいと思います。
今回卵を産んだのはカイカムリというカニです。貝殻などを背負う姿をご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。

そんなカイカムリ、ある日様子を見ると、お腹の俗に“ふんどし”と呼ばれる部分をパタパタと開閉していました。何をしている…何か…出してる……赤ちゃんだ!?!?と、急いで幼生を回収し、ドタバタと飼育が始まりました。そのとき撮影したカニの幼生がこちら。

これが…カニ…???
カニです。間違いなくカニです。ここから何度も脱皮を繰り返して皆さんが知っているカニの姿になっていくのです。これはゾエア幼生といって、カニの最初の成長段階です。この時点で大きさ1.8mmほど。アルテミアという小さなプランクトンをもりもり食べてこれまた2回ほど脱皮をして、こんな姿になります。

心なしか殻がしっかりしてきたように見えませんか?やっぱり甲殻類なんだなあと実感できる成長ですね。この時点で大きさは2.6mmほど。わずかではあるのですが、毎日様子を見ているからか一目瞭然の成長ぶりなのです。ゾエア幼生は浮遊生活をしており、水槽の中をピョコピョコ移動しながらエサを食べていました。光に集まる習性を利用しながら水槽の掃除も行います。
ゾエアの成長に心躍らせる一方、個体数はこの時点でかなり減ってしまっていました。数え切れないほどいたゾエアたちがもう数えられるほどに…。難しい。ゾエアの飼育、思ったより難しいです。ここからまたまた2回ほど脱皮をすると、今度はメガロパ幼生へと変化します。この時期になると、浮遊生活に別れを告げて水槽の底に着底します。

コロンと仰向けになっていますね。右側に尾、左側に目が見えるでしょうか。このメガロパ幼生、正面から見た写真がこちら。

ちっちゃいはさみ!!!!!!!!たまりません!!!!!!!
…ですが嬉しいことだけではありません。一番先に成長した個体が、他の個体を食べてしまったのです。甲殻類の成長段階における共食いはよくあることで、私はこの時その対策を怠ってしまっていたのです…。本来であれば、メガロパ幼生の手前に差し掛かるあたりで小さな容器で個室を作るべきだったのでしょう。無念です。それならなんとかこの1個体だけでも育て上げたい…!そんな一心で飼育すること数日、

ち、稚ガニだ~~~~!!!
昨日までメガロパ幼生の姿だったのが、この日には立派なカニの形に成長していました。やはり愛らしいちっちゃいはさみにはにっこりとせざるを得ませんね。

残念ながら、数日後にこの個体も亡くなってしまいました。大きな悔しさを噛み締めながら、しかし学んだことも多くあります。エサの種類や量、水槽の手入れの方法や成長のスピードなどなどやはり実際の経験から得られるものの大切さを痛感しました。まだまだ学べることはそこら中に転がっています。貪欲に吸収しながら、次のチャンスに備えます!!

魚類展示課 皆川梢

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