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No,007:アラレキンチャクフグ

No,007:アラレキンチャクフグ Canthigaster papua (Bleeker, 1848)

 

 

 フグ目フグ科の中には、キタマクラ属と呼ばれるグループがあり、体が平たく、吻が尖っており、鼻の穴が小さく一つしかないという特徴があります(松浦,2017)。世界に36種が知られており、そのうち日本沿岸には11種が分布しています(山田・柳下,2013;松浦,2017)。形がトラフグ等とは異なるため、一見するとフグに見えないかもしれませんが、腹ビレはなく、きちんと膨らむこともできます。このキタマクラ属の中で最も新しく(2020年3月時点)和名がついたのが、今回紹介するアラレキンチャクフグです。

 

 先ほど最も新しくといいましたが、この和名がつけられたのは2005年です。Matsuura and Toda(2005)により、沖縄から水中写真と標本が得られたことが報告されました。当時その報告には、Canthigaster papuaではなくCanthigaster solandriとされていました。この2種は体色が異なることで容易に区別ができますが(C. papuaは暗めの赤味が強い褐色に、同じ大きさの青白い斑点がある。C. solandriは淡い褐色に斑点があるが、眼の後方の斑点と、眼の下方の斑点の大きさが異なる)、研究者によって意見が異なるようです(松浦,2017)。Matsuura and Toda(2005)の報告では現在のC. papuaではなく、C. solandriに対してアラレキンチャクフグの和名をつけられていましたが,その後、松浦(2017)の中ではMatsuura and Toda(2005)で扱ったものがC. papuaであったことを報告しています。この2種の和名については海響館内でも変更を行いました。

 

 海響館は世界中のフグ目魚類を集めて展示しているため、もちろんC. papuaC. solandriも飼育記録があります。表示している種名については、日本産として和名を提唱された種に関してはそれに従っています。Matsuura and Toda(2005)の報告が出た後は、C. papuaは「パプアントビー」、C. solandriは「アラレキンチャクフグ」としましたが、松浦(2017)の後は、C. papuaを「アラレキンチャクフグ」としています。そのため、過去のHPや解説物では現在と異なった解説をしている可能性があります。

 

 海響館の展示物は、スタッフ皆が常に最新情報を入手できるようにアンテナを張り、常に最新情報の入手を心掛け、それに基づいて作成しています。もしも気になるものがあれば、いつでもご質問ください。

 

引用文献:
松浦啓一.2017.日本産フグ類図鑑.東海大学出版部,秦野.xiv + 127 pp.
Matsuura, K. and M. Toda. 2005. First record of the sharpnose puffer, Canthigaster solandri (Teleostei: Tetraodontiformes), from Japan. Bulletin of the National Science Museum, Series A, 31: 119–122.
山田梅芳・柳下直己.2013.フグ科.中坊徹次(編),pp. 1728–1742, 2239–2241.日本産魚類検索―全種の同定 第3版.東海大学出版部,秦野.

魚類展示課 園山貴之

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