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No,001:コモンフグ
No,001:コモンフグ Takifugu flavipterus Matsuura, 2017
フグ目フグ科トラフグ属に属し、昔から下関でもよく漁獲され、食用にも供されます。漁師さんは複数種をまとめて、「ナゴヤフグ」とも呼ぶこともあり、釣りでもよく外道で釣れます。しかし、この原稿を書いている2018年11月で時点は、日本産のフグの中で最も新しい新種となっています。
コモンフグを初めて記載したのはライデン王立自然史博物館館長のテミンク(Temminck)とシュレーゲル(Schlegel)で、記載に用いた標本は、シーボルト(Siebold)が日本で収集し、オランダに送ったものでした。医師でもあったシーボルトは、長崎に滞在した1823年から1829年の間にたくさんの魚類を収集しており、コモンフグもその中に含まれていました。それらはテミンクとシュレーゲルによって「Fauna Japonica(日本動物誌)」にまとめられ、1833年から1850年という長期にわたって5つの部篇が分冊刊行されています。Fauna Japonicaでは、コモンフグの学名はTetraodon poëcilonotusとなっています。その後1984年に出版された「日本産魚類大図鑑」からTakifugu poecilonotusの学名があてられ、最近まで用いられていました。しかし、理由があり、Takifugu poecilonotusは別種のクサフグにあてられるべき学名であることがわかりました(現在のクサフグの学名はTakifugu alboplumbeus (Richardson, 1845))。それによりコモンフグの学名がなくなった、つまり未記載種ということになったのです。それらの事情から、2017年にコモンフグTakifugu flavipterusとして国立科学博物館の松浦啓一博士により新種記載されました。
新種記載する際には、記載に用いた標本の中から、必ずタイプ標本と呼ばれるその種の基準になる標本が指定されます。その中でホロタイプ標本と呼ばれる標本は、世界共通の種名である学名を伴っており、その種の標本の中で、世界で最も重要なものです。実は、今回新種となったコモンフグのホロタイプ標本は下関産の個体です。ちょっとマニアックな話題ですが、海響館でももちろんコモンフグを展示していますので、是非見に来てください。
コモンフグの新種記載について詳しくは下記のURLを参照ください。
Matsuura, K. 2017. Taxonomic and Nomenclatural Comments on Two Puffers of the Genus Takifugu with Description of a New Species, Takifugu flavipterus, from Japan (Actinopterygii, Tetraodontiformes, Tetraodontidae). Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A, 43: 71-80.(http://www.kahaku.go.jp/research/publication/zoology/v43_1.html)
魚類展示課 園山貴之