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第176回 「おもちゃ」

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環境エンリッチメントという言葉を聞いたことがありますか?

動物本来の生息地の環境と飼育下を比較すると、飼育下では外敵に襲われることもなく食べ物に不便のない安心して生活できる環境ですが、その一方刺激や変化が少なく単調になりがちです。動物の福祉と健康のために飼育環境に刺激や変化を与え動物の生活を豊かにすることを環境エンリッチメント(Environmental Enrichment)といいます。
その環境エンリッチメントの取り組みは様々あります。例えば、餌の種類を増やしたり与え方などを工夫する、群れをつくる習性の動物には群れ飼いをする、動物の本来持っている行動を引き出せるよう飼育施設に工夫を施すなどです。また、動物に行うトレーニングも“楽しみ”や“新たな刺激”を与えるもので、環境エンリッチメントと捉えています。今回はその中の1つで動物たちが餌を食べていない自由な時間に楽しむための遊び道具(「おもちゃ」)について紹介しましょう。
海響館では動物たちの体や習性に合わせて手作りのおもちゃを作っています。大きいものや小さいもの、ブイやロープ、ホース、重りなどを使って水面に浮くおもちゃや沈むおもちゃを作ります。作る時に大事なことは、道具の耐久性と安全面、そして評価です。例えば、イルカのおもちゃを作る時は、力強く噛んだりしたときに、壊れたりちぎれてしまうとその破片を誤って飲み込んでしまうかもしれないので、ホースの中にロープを通すことで強度を増し、端はほどけないようしっかりと縛ります。また胸ビレや尾ビレに引っ掛けたりしたときに、鋭利な部分で動物が怪我をしないように丸くします。そして作った後は、新たなおもちゃを怖がらないようにトレーニングを行い、そのおもちゃを好んで遊んでいるか評価し遊ぶ頻度が少なければ道具の工夫をします。
動物たちが限られた環境の中で、いかに楽しくいきいきと暮らしていけるかを考えるのも飼育員にとって大事なことなのです。イベント時間以外で、動物たちがおもちゃを使って遊ぶ姿も是非見てみて下さい。

 

海獣展示課

井上美月

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