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魚の標準和名の由来

 まずは標準和名について。魚類の和名には大きく分けて、標準和名と地方名があります。

 

 同じ魚でも、各地域によって様々な呼び方があります。それが地方名です。しかし同じ種に対して複数呼び方があると、各地域で同じ魚の話をしているのか違う魚の話をしているのかわかりません。地方名に対して、標準和名は、同じ種に対して1つしか与えられない種名です。水族館で表記している種名は基本的には標準和名です。

 例えば、「キダイ」という魚がいます。「キダイ」は下関が全国でもトップクラスの水揚げをしている魚です。このキダイは下関では「レンコダイ」と呼びます。おそらく下関の方や釣人の方はレンコダイのほうが、馴染みがあると思います。この種では標準和名はキダイ、地方名はレンコダイです。

 また、成長するにつれ、名前が変わる『出世魚』といわれている、スズキ、ボラ、ブリなどもいますが、これらも標準和名は1つずつしかありません。スズキはいくら小さくても、いくら大きくても、標準和名は「スズキ」です。

 

 日本魚類学会によると、魚類に標準和名が体系的につけられたのは1913年で、その選定については一般性の高い地方名が尊重され、地方名が全くないものについては新しくつけられたようです。

 

 標準和名は、論文などによって提唱されることが多いです。その中にはその由来を記載している場合があります。いくつか紹介しましょう。

 

 2017年にハゴロモコンニャクウオと標準和名が提唱された魚がいます。これは、特徴である大きな胸ビレなどを優雅に広げながら遊泳する姿が,天女の「羽衣」をイメージすることに由来する、と論文で記載されています。

 

 水族館でも人気のあるチンアナゴは、アナゴ科に分類されている魚類です。人気の高い魚で、ご存知の方も多いと思います。よく日本の犬の品種に「狆(チン)」という犬種がおり、それに似ているから、と言われていますが、根拠になる文献などがわからず、似ているようにも似ていないようにも見え、私自身は半信半疑でした。

 しかし、先日、博物館の方から論文を見せていただくことができました。それによると、1979年に出された論文の「Garden Eels from Japan」に、「チンは日本のパグのこと」という記載がありました。(原文は英語)チンアナゴの眼と頭が似ていることから提唱されたようです。似ているか似ていないかはさておき、犬の狆(チン)が由来なのは間違いないようです。

 

 魚の中には、なぜそのような標準和名がつけられたのか、よくわからない種がたくさんいます。変わった種名を見かけたらその種名の由来を調べてみるのも面白いかもしれませんよ。

チンアナゴは海響館でも展示していますので、是非見に来てください。

魚類展示課 園山貴之

 

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