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トサカから生えた?美しい糸の正体は?

 海響館の2階展示エリアにはソフトコーラルと呼ばれるサンゴの仲間を展示する水槽があります。ある日、その水槽の中を覗くとウミトサカの一種からなにやら白い物が出ていました。

 ちょうどその日は、朝に掃除をするため、このウミトサカの一種を水槽内で移動させていました。そのため、傷がついてしまい粘液でも出てしまったのかな?と思ったのですが、じっくり観察していると、白い物は粘液ではなく、繊細で美しい触手らしいものであることが分かりました。

 ではこの触手らしいものはどこから出ているのか?それを突き止めようとさらに目を凝らして観察してみましたが、、、残念、水槽の外からでは観察できる範囲が限られ、白っぽく傷がついたようなあたりから出ているようにも見えましたがよくわかりませんでした。

 「このままでは終われない」ということで、もっと詳しく観察するためこのウミトサカの一種を少し取り上げてみることにしました。取り上げてみると、傷のように見えた白っぽい部分は一か所でなく群体のあちこちにあることが分かりました。

 また、その大きさはそれぞれ約1cm程度あり、表面に何かがべたっとひっついているように見えました。そこで、この白い物がいったい何なのか慎重に取り外して観察してみることにしました。

 取り外してみると小さく丸まってしまい、その形がよく分からなくなってしまったのですが、海水を入れたシャーレの中にしばらく置いておくと、丸まっていた体が徐々に元のように広がりはじめ、ついにその体から触手が生えていることを確認できました。

 どうやらウミトサカの一種から生えた?美しい糸の正体はコマイクラゲムシの触手だったのです。クラゲムシとは、有櫛動物といわれる生き物のグループで、同じ有櫛動物門には刺胞を持たないクラゲであるウリクラゲやカブトクラゲなどがいます。

 夜になりもう一度水槽の中を覗くと、ウミキノコや別のソフトコーラルからも昼に見た触手よりも、もっと長く伸びた触手を見ることができました。今まで気付いていなかっただけで実はかなりの数が水槽のソフトコーラルについているようです。

 コマイクラゲムシのような小さな生き物にとって、ソフトコーラルにくっつき、隠れながら暮らす寄生生活は生き抜くための良い方法なんでしょうね。

魚類展示課 久志本鉄平

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