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カブトガニのことが知りたくて ~カブトガニの幼生~

 下関市の瀬戸内海側には千鳥浜という干潟が広がっています。干潟と一言で言っても様々な環境があります。砂っぽいところではオサガニ、泥っぽいところではヤマトオサガニ、葦が生えたような場所ではシオマネキ、礫が混ざるところではハクセンシオマネキなど、環境によって見ることができる生き物も違ってきます。

 その中でもカブトガニは生きた化石としても知られ、干潟を代表する生き物で多くの人に知られています。そんなよく知られた生き物が身近にいるにもかかわらず、自分自身は自然下のカブトガニをほとんど見たことがないことに気が付き2012年頃からカブトガニの観察を始めました。

 カブトガニを観察するためにはまず見つける必要があります。干潟の生き物を見つけるには、干潮時の干潟表面にできた様々な生き物の痕跡(這い痕)などをもとに探す方法もあります。小さな穴が細かくあいていればカニなどが歩いた跡。

 また、引きずったような跡があればカブトガニの可能性もありますが巻貝も似たような跡をつけます。初めは巻貝とカブトガニの跡が似ているように見えるのですが、見慣れてくると違いが分かるようになってきます。

 その違いは、カブトガニの場合、尾剣と呼ばれるしっぽのように見える部分を引きずって進むので這い跡の真ん中に一本の線ができることと、這った痕が直線的ではなくぐにゃぐにゃした跡となることです。

 こんな特徴をもとにカブトガニを捜すこととしました。カブトガニは干潟にまんべんなくいるわけでなく、主に澪筋(潮が引いた後でも流れが残る部分)を中心とした周辺に分布し、さらに成長するにつれ沖に分布が広がっていくことが調べてみて分かりました。計測したカブトガニ2178匹を元にグラフを作成すると、脱皮ごとの成長の様子を知ることができました。

 これまで干潟を歩いてカブトガニの幼生を探してきましたが、まだ干潟で見つけることができない幼生がいます。それは1齢と呼ばれる卵から孵化し次の脱皮をするまでの期間の幼生です。1齢幼生は産卵場所である干潟周辺の砂浜では、卵から孵化し砂から出る時期のみ水中を泳ぐ姿を見ることができますが、それ以降は干潟では見ることができずどこにいるのかよくわかりません。

 2齢~9齢幼生くらいの泥~砂泥の干潟で見つかるサイズのものは干潟で身を隠すのに適した赤黒い色や灰色っぽい色をしているのですが、1齢幼生は干潟では目立ってしまう薄い黄色っぽい色をしています。飼育下では1齢幼生は2齢幼生になるまで餌を食べる必要がないことが分かっています。そのため、孵化した1齢幼生は泥っぽい干潟には出ず、ふ化後すぐに産卵場所周辺の砂底に潜ってしまうのかもしれません。いつかふ化直後でない1齢幼生に会いたいものです。

魚類展示課 久志本 鉄平

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