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イルカってなに? 種名と分類

 最近はテレビやインターネットなどで様々な情報を見聞きします。しかしなかには間違った情報も少なくありません。水族館に関係するものでもいくつもあり、今回は「4m未満をイルカで、それ以上をクジラ」ということについてお話ししましょう。

 

 「4m未満をイルカで、それ以上をクジラ」というのはイルカとクジラの話でよく聞きますが、これは便宜上、一般的に使われているフレーズで、分類学上では正しくありません。イルカと呼ばれている生き物もクジラの仲間なのです。

 

 分類を見てみます。

 学校で界・門・綱・目・科・属という分類の単位について習ったことがあると思います。(もっと多数の分類単位がありますが今回は割愛いたします)私たちヒトは、「動物界・脊索動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属」に分類されています。

 

 では全国の水族館でよく飼育されているバンドウイルカは何の仲間でしょう。

 バンドウイルカは「動物界・脊索動物門・哺乳綱・鯨偶蹄目(クジラ目)・マイルカ科・ハンドウイルカ属」と分類されています。動物界・脊索動物門・哺乳綱までは私たちヒトと一緒ですね。世界で一番大きいシロナガスクジラはというと、「動物界・脊索動物門・哺乳綱・鯨偶蹄目(クジラ目)・ナガスクジラ科・ナガスクジラ属」となっています。

 

 バンドウイルカと、シロナガスクジラの違いは、科という分類単位からです。

 バンドウイルカはマイルカ科、シロナガスクジラはナガスクジラ科です。ではイルカ、クジラというような分類単位があるかというと、鯨偶蹄目をクジラ目とする場合がありますが、「イルカ」はありません。

 

 「海の哺乳類FAO種同定ガイド」を参考にすると、マイルカ科のなかにはバンドウイルカ(成体の体長1.9-3.8m)もいますが、シャチ(8.5m以上)も含まれ、アカボウクジラ科のなかにはアカボウクジラ(7-7.5m)やピグミーオウギハクジラ(3.7m以上)もいますので、大きさで科を分けていないことがわかると思います。また、同じ種でもオスとメスで大きさが異なる種もいます。

 

 では分類ではなく、名前の呼び方をイルカ、クジラとわけているのでしょうか。
シャチ、スナメリ、オキゴンドウ、コマッコウなど「イルカ」、「クジラ」と名前についていない種がたくさんあります。そもそも和名はその生物の分類などを表しているわけではありません。

 例えば、「イシガキダイ」、「ヒゲダイ」、「スズメダイ」、「トノサマダイ」「キチヌ」。この5種の中でマダイなどが含まれるタイの仲間(タイ科)は「キチヌ」です。タイの仲間だから「タイ」と和名につくわけではありません。

 イルカとは、小型のクジラの仲間の中で種名にイルカとついているものが一部いる、という程度のもので、他の生き物との区別はありません。

 

 分類は私たちの生活にとってとても大事な行為です。毒をもっている魚か毒を持っていない魚か分類できなければ、食中毒がいたるところで起きてしまいます。

 別種や別のグループ(科や属など)と分類するには、基本的に形態(体の形)や体色に明らかに異なる点があるのです。なお、生き物の大きさは環境によっても変化するので注意が必要です。分類とは、様々な必要性のもとに私たちが生き物を見分けるためのものなので、曖昧な基準では見分けてはいないのです。

魚類展示課 園山貴之

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