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英名、みてみて

 昨年、おさかな探検隊では、4月に学名の話を、12月に標準和名の話が掲載され、密かな生物名ブームの年(?)となりました。しかし、海響館の魚名板にはもう一つの名前、「英名」が表記されています。今回は英名の意味と楽しみ方をお伝えします!

 

● 英名って?

 英名は生き物の英語の名称で、欧米で広く使われます。例えばミナミハコフグの英名は“Yellow boxfish”で、意味は「黄色い、箱のような魚」。英名の由来はその生き物の形態、生態、発見に関わった人物、主な生息地など、様々です。

 海響館では、海外のお客様にも水槽の生き物を説明するため、多くの展示水槽で、英名を表記しています。

● 英名の特徴

  ここで注意しなければならないのは、英名は一つの名が複数の種を指していることがあること。日本語の生物名にもこのような性質をもつ地方名や通称はありますが、魚類などでは特定の種に対応する正式な和名「標準和名」が指定されています(便利!)。

 どうやら、日本と英語圏の国々では、魚の名前の厳格さに差があるようです。この理由としては、日本では古くからヒトと魚との結びつきが強く、一つ一つの種に名前を付けていましたが、ヒトと魚の結びつきが日本ほど強くない英語圏の国々ではそのような習慣がなかったことがあげられるようです。

 近年では、和食ブームなどにより欧米でも魚が主要な食糧源として認知され、国際連合食糧農業機関(FAO)を中心に魚類はじめ水圏生物の英語名称の整理が進んでいます。詳しいお話は、「動物分類学(松浦啓一著、東京大学出版会)」などの書籍を読んでみてください。

 

● 英名を楽しむ!

  そんな英名に注目すれば、より楽しく生き物を観察するきっかけになるかもしれません。そこで、今日は英名の注目ポイント二選をご紹介します。

 

1. 名前の由来を想像する・調べる

  生物の名称全体に言えることですが、英名はその由来がはっきりしていないものも多いのです。しかし、由来を想像したり、通説を調べたりするのは自由でしょう。

 例えば、ナマコの仲間の英名はSea cucumber=海のキュウリ。なるほど、細長くてトゲトゲしているように見えるナマコ、キュウリっぽいかも。

 それでは、マンボウの英名Ocean sunfishは・・・?ocean = 海はわかりますが、sun=太陽。由来は何だろう?形や色が太陽っぽくはないなぁ・・・。文献で調べてみると、「マンボウは海面で体を横たえる、日向ぼっこのような行動をするため」との情報がありました。「日向ぼっこをする魚」。可愛いじゃないですか。このように、名前の由来を調べることが、生き物の情報を知るきっかけになることもあります。

 

2. 意味を調べて、標準和名と比べる

  標準和名と比べると、由来が違っているものを見かけることがあります。例えばネコザメ。英名は“Japanese bullhead shark”。“bullhead”は牛の頭という意味。標準和名にはネコが入っているのに、英名にはウシが入っています。ネコザメの眼の上の隆起を和名ではネコの耳、英名ではウシのツノに見立てたことが由来です。同じ生き物の同じ部位に着目した名称でも、和名と英名で差があります。

 ちなみに、「ネコザメ」をそのまま英語にすると“Cat shark”。この英名をもつサメを調べてみると・・・トラザメの仲間が該当します。トラザメの切れ長の眼と茶色い体色は、言われてみればネコっぽくも見えるけど・・・自分ならトラザメにどんな名前を付けるだろう?生き物を見ながらこんなことを考えていると、より水族館を楽しめます(意見には個人差があります)。

 名は体を表すとは言いますが、標準和名でも由来は様々です。これを英名に広げれば様々な発見があります。大好きな生き物の英名を覚えれば、次の英語テストも高得点が狙えるかも・・・しれません。魚名板の片隅の英名に是非注目してみてくださいね。

魚類展示課 荻本 啓介

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