menu

loading...

第193回「イルカの眼」

 私たちは担当している動物の眼に異常がないか、毎日チェックをしています。そこでふと思ったのですが、皆さんはイルカの眼をしっかり見たことがあるでしょうか?水中で生活しているイルカたちの眼には、私たち人間の眼との違いがあります。今回はイルカの眼に注目してみましょう。

 基本的な眼の構造は人間ととてもよく似ていますが、イルカは水中という環境で生活することから、水中を高速で泳ぐことによって生じる水の摩擦や水温の変化などに晒されます。このような状況に対応するため、イルカの眼は前方ではなく横についていて、さらに体に対して比較的小さな眼をしています。また、イルカの角膜※の表面には透明で粘性のある物質が分泌されていて、その物質が膜のように覆うことで角膜を保護しているのです。

 ※角膜とは眼球前面にある膜のことです。

 次に、見るということについては、水自体やそこに含まれている物質による吸収や散乱の影響で水中での光は空気中に比べて弱くなってしまうため、イルカの眼には弱い光でもしっかりと見えるような仕組みがあります。それは網膜の下にある「タペタム」というものです(脈絡膜(みゃくらくまく)という膜に含まれています)。物を見る時は外からの光を網膜で受けて見るのですが、タペタムは光を反射するもので、網膜を通過した光をタペタムで反射してもう一度網膜を通過させることによって、弱い光でも見ることができるのです。実はタペタムはイルカだけではなく、身近な動物だと猫や犬も持っています。ペットの写真を撮った時に眼が光っていることがあると思いますが、あれはフラッシュの光をタペタムが反射して起きている現象なのです。さらに、イルカは左右の眼を別々に動かすことができ、水中でより広範囲の情報を得ているようです。

 このようにイルカの眼は水中での生活に適用できるように様々な仕組みがあります。

 是非皆さんも泳ぐイルカたちの眼に注目してみて下さい。

海獣展示課

野村 健勇

PAGETOP