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水族館の役割とは?

 水族館・動物園は多様な役割を担っているので簡単に説明するのは難しいのですが、広く知られているのは「種の保存」「教育・環境教育」「調査・研究」「レクリエーション」の4つです。といっても、具体的にどういうことかはわかりにくいかと思うので、今回は海響館の海獣類(海にすむ哺乳類のこと)を担当している私の視点からそれらの役割を紹介していきたいと思います。

 まず、多くの方が水族館に足を運ぶ目的は、水の世界にすむ生き物たちを見て楽しんだり癒されたりすることだと思います。水族館はそういう場所であるとともに、「命の大切さ」や「生き物の生き様」を感じてもらったり、「気づき」や「学び」を得てもらったりする場所でもあります(社会教育施設と言います)。実際の生き物を展示することで、本や映像からでは得ることのできない生き物の生活そのものや動き、匂い、鳴き声など、色々な角度から体験を通して知ることができるのが水族館の特徴だと言えるのです。

 その一つがイルカとアシカの共演ショーで、現在のテーマは「ビーチセイバーズ」! SDGsの一つの取り組みとして、海洋ゴミの漂流などから海の生き物の安全を守るという内容となっており、子どもから大人の方までショーを楽しみながら環境問題への関心を持ってもらえればとの思いが詰まったものになっています。ちなみに、ショーの中で使う道具(漁業で使うブイなど)は、実際に海岸から拾ってきたものを使うというところまでこだわりました。

 このようなショーやその他の館内イベントには、「レクリエーション」と「教育・環境教育」の要素が含まれています。

 また、水族館生き物の繁殖に関する取り組みにも力を入れています。海響館では、これまで海獣類について、バンドウイルカ、スナメリ、ゴマフアザラシの繁殖を行ってきました。

 現在では、自然繁殖だけでなく人工授精による繁殖にも取り組んでおり、妊娠判定のためのエコー検査や、人工授精のための精液採取などに関する様々なトレーニングに力を入れています。さらには、飼育している生き物以外でも、野生のスナメリが網に絡まったり、イルカなどが海岸に打ちあがってしまって衰弱していると連絡を受けることがあり、現場に急行し適切な処置を行います。

 実は、海響館で生活するスナメリのほとんどは救護した個体で、国の許可を得て飼育しており、大学との共同研究を行うことによって今まで知られていなかったスナメリの新たな知見を獲得することができました。これらの活動は「種の保存」や「調査・研究」の役割に繋がっています。

 水族館にはこのようにさまざまな役割がありますが、それらを実現するために一番大切なことは水族館で暮らす生き物たちが健康でいることです。そのために、私たちスタッフは日頃から生き物たちをしっかり観察し、環境を整え、また、健康管理のためにトレーニングをするなど、健康で楽しく過ごせるようにたくさんの工夫をしているのです。

海獣展示課

高木 陽友美

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