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第243回 慣れる

 現在アクアシアターで行われているイルカとアシカの共演ショーは、4月1日から「ビーチセイバーズ~Sealion Dolphin Globe show~」にテーマが変わりました。海の生き物の安全を守るために結成された、アシカ・イルカ・トレーナーのビーチセイバーズが漂着した海洋ゴミを回収し、喜びを皆で分かち合うというオリジナルストーリーです。このショーでは漂着したゴミに見立てた様々な道具を使いますが、動物たちは初めて見るものに警戒することもあるので、事前にしっかりと慣れてもらわなければなりません。今回は、警戒心が少し強めなカリフォルニアアシカの「なでしこ」が、今まで見たことがない道具に慣れていくまでをお話ししていきます。

 慣れるといっても、私たちトレーナーは初めて見る物をなでしこの目の前に置いて、慣れるまで待つわけではありません。トレーニングすること(簡単には褒めるということです)で少しずつ慣らしていくのです。例えば、今回のショーで使う大きな道具入れ(大きな白い箱)。最初は、なでしこが怖がらないように十分に離れたところでエサをあげていきます。

なでしこが大丈夫そうであれば、次の回には少し距離を縮め、様子を見ながらさらに距離を縮めていきます。ここで重要なのは、なでしこが怖がらないこと。「ちょっと怪しいなあ」と思ったら、ゆっくりとしたステップにします。箱に近づいても大丈夫になれば次のステップとして、口先で箱にタッチしたり、前足で触れたりするなど、箱が怖いものではないということをさらに強めていきます。

また、この箱はショーの中でふたを開けることがあるため、ふたの開け閉めに対しても同じように小さなふたの動きから徐々に大きな動きへと変えていきながらトレーニングによって慣らしていきました。

このように箱に慣れたことで、なでしこはこの箱の前でもいつも通りのパフォーマンスができるようになりました。

 もう一つ、海洋ゴミとして使うフロートに対してのトレーニングも紹介します。フロートは、ショーの中でトレーナーが持ち運んだり、イルカが運んだりと目の前で動く道具です。フロートを急になでしこの近くで動かすと驚いて逃げてしまうかもしれないので、やはり慣れてもらわなければなりません。

トレーニングは、箱の時と同じように小さなステップで進めていきます。最初はなでしこから離れた場所で、なでしこが怖がっていないかよく観察しながら床に置いてあるフロートを持ち上げたり、左右に滑らせたりと動かしてみます。

なでしこが後ろに下がるようなそぶりや、目を大きく開き周囲を見る様子があれば怖がっているのかもしれません。その様子を見て、どこからスタートして、どんな手順で進めていくかを決めます。フロートの小さな動きに対して落ち着いているところを褒め、慣れてきたと思ったら、少しずつフロートの動きを大きくしていきます。様々なフロートの動かし方に慣れてきたら、なでしことフロートの距離を縮めていきます。

併せて、これも箱の時と同じようになでしこからフロートに触れていくようにトレーニングすると、より早く慣れてくれます。このような、日々の細かな積み重ねで、動物たちは豊かな生活を送ることができ、ショーでいろいろなパフォーマンスを見せてくれるのです。

 今回お話した内容はなでしこに合ったトレーニング方法です。個体によっては新しいものに興味津々であまり驚かないアシカや、なでしこのように一つずつゆっくり慣れていく必要があるアシカなど、性格は十頭十色です。その個体の様子を見ながら、その個体に合った方法やスピードでトレーニングしていくことが大切です。それがとても難しいことなのですが・・・。

なでしこはゆっくり少しずつトレーニングを積み重ねていきます。もしトレーニングをしているところを見かけたら、温かく見守ってください。

海獣展示課

田代 真菜

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