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「美味sea(おいしい)水族館」魚食レポート後編 ~有明海編~

 前回、令和3月7月3日から開催している(コロナの影響により令和3年8月21日から現在まで臨時休館中)特別企画展「美味sea(おいしい)水族館」内で紹介している、スタッフによる各地の魚食の実体験レポートについて、広島県三次市の「わに料理」の詳細をお伝えしました。今回はその後編です。

 

 国内で広大な干潟が広がっている地域といえば、そう・・・有明海です。九州4県にまたがる有明海には、その独特の環境から、特有の生き物が多く生活しています。

 

 お世話になったのは、佐賀県佐賀市にある「むつごろう亭 丸善」さんです。店主のご家族の方が漁師をされており、お店のすぐ近くの有明海で獲れた魚介類をすぐに調理し、新鮮な状態で提供していただけます。店主におまかせすると、有明海の珍味を余すことなく味わうことができます。お店に到着して少しすると、「どうぞ。」とお膳が出てきました・・・そこには所狭しとお皿が並び、普段お目にかかれない料理たちが。

 

 

 エツ(有明海固有のカタクチイワシに近い魚)の唐揚げ、ヤスミ(メナダ)の御造りに、茹でムラサキガニ(イシガニ)などなど。どれも、珍味というより立派な海鮮料理として楽しめ、その味は絶品でした。中でもインパクトがあったのが全身真っ黒なムツゴロウの甘露煮。傍から見るとまるで炭を食べているように見えますが、甘辛く煮付けてあって全身美味しくいただけました。

 

 

 店主曰く「最近は獲れる生き物の種類が少なくなってきた。時期によっても種類が違うから、その時々に合わせた料理を考えるようにしているよ。」とのこと。また、お店の近くに新しく完成した干潟のビジターセンター「ひがさす」内に有明海の魚食を展示するコーナーを作る際にも協力されており、有明海の魚食の普及啓発活動にも尽力されています。

 

 お腹いっぱいになった後は、何と漁を見学させていただきました。潟スキーと呼ばれるソリのような乗り物を使って、泥の上をスイスイと移動していきます。我々素人が足をつっこむとまったく抜け出ることができなくなるぐらい深い泥の上を移動していく様子は、まるで雪の上をスキーですべるようにスムーズ。タカッポ漁と呼ばれる漁法で事前に仕掛けた筒状の罠から次々にムツゴロウを回収していきます。

 

 

 呆気に取られて見ていると、今度は「スボかき」という長細い竹の棒の先に金属のカギのついた道具を持って新たな漁場へ。泥の中を探っていくと、ものの数分後に海のエイリアンことワラスボがとれました。見事な達人技に脱帽です。長年の経験あっての漁、そして料理であることを実感しました。

 

 

 

 ここまで前編と合わせて2か所の魚食を紹介してきましたがいかがだったでしょうか。実際に現地に足を運んでみて、時には時代に合わせて形を変えながら、地元に根差した「文化」として息づいていること、そしてそれを未来へ残していこうという地元の人々の意志を肌で感じることができました。皆さんにも少しでも伝われば幸いです。

 

 皆さんも、コロナ禍が落ち着いたら各所の魚食を堪能しに行ってみてはいかがでしょうか。また、今回の特別企画展内には、皆さんが知っている魚食を付箋に書いて貼り付け、他の来館者の方々に紹介してもらうコーナーもあります。次に開館した際には是非そちらにも参加してみてくださいね。

 

魚類展示課 石橋將行

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