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絶滅危惧種になったフグ

先月、国際自然保護連合(IUCN)でクロマグロと同時に、「カラス」が絶滅危惧種に指定されました。お魚探検隊の「カラスは鳥じゃない!?2011年6月28日」でも紹介したようにカラスはフグ科魚類です。「カラスフグ」は地方名です。外見は、トラフグと良く似ており、トラフグは臀ビレが白く、体の背側の後半に斑紋があるのに対し、カラスは臀ビレが黒く、背側の後半に斑紋がないなどの特徴で見分けられます。漁師さんに聞くと、トラフグがいるところよりも浅い水深で釣れることが多いようです。

今回のIUCNレッドリストの更新で、カラスは絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に指定されました。これより上のカテゴリーは絶滅と野生絶滅しかなく、非常に危機的状況にあるといえます。このような状況はフグの中で、カラスだけに起こっている事ではありません。IUCNレッドリストにあげられているフグ科魚類を見てみましょう。

IUCNレッドリストに掲載されているフグ科魚類

●絶滅     該当種なし
●野生絶滅  該当種なし
●絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)
1種(日本にも分布)カラス
●絶滅危惧ⅠB類(ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)
5種(海外産のみ) Takifugu plagiocellatusなど
●絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)
5種(海外産のみ)アベニーパッファーなど
●準絶滅危惧(存続基盤が脆弱な種)
4種(日本にも分布)トラフグ、ナシフグ、サンサイフグ、メガネフグ
●軽度懸念(基準に照らし上記のいずれにも該当しない種)
136種(内、日本にも分布する種は45種)クサフグ、ショウサイフグ、シロサバフグなど
●情報不足(評価するだけの情報が不足している種)
25種(内、日本にも分布する種は3種)クロサバフグ、ナガレモヨウグ、ナメラダマシ

上記を見ると、食用とされるトラフグやナシフグも準絶滅危惧種に、観賞用として良く流通しているアベニーパッファー(Carinotetoraodon travancoricus)が、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。カラスだけを増やそうとしても、すぐに他の種が同じような状況になってしまいます。 漁師さんは魚を取らなければ、収入がなく、生活できません。私たちも食べ物を食べなくては生きていけません。しかし、いま当たり前のように獲れて、食べることができるフグが、あたりまえでなくなる日が来る可能性もあるのです。 これを機会に、ただ水槽の中の生き物を眺めるだけではなく、いつもとは違う目線で生き物たちを観察しても良いかもしれませんね。

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karasu

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kusafugu

meganefugu

展示部魚類展示課 園山貴之

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