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目もサメる!「サメアゴ」の話
皆様はじめまして。新人お魚探検隊員の荻本です。旬な海の生き物のお話をたくさんお届けできるよう、がんばりますのでどうぞよろしくお願いします。さて、海響館では今年のゴールデンウィーク、貴重なナマのサメに触れることができる「サメの標本タッチング」を開催いたしました!では、ゴールデンウィークの後、このサメたちはどうなったのか・・・実は、美しいサメアゴの標本として生まれ変わりました!今回はこの中でも特に珍しい、あるサメのアゴを見ながらサメアゴのヒミツに迫ってみたいと思います。
★まずは「シャクっ」と紹介!
今回アゴをご紹介するのはこちらのヨロイザメ。水深200~600mの深海に生息するサメで、最大で全長3mくらいまで成長します。この個体の全長は1mほどで、宮崎県延岡沖の底曳き網で採集され、海響館にやってきました。皮ふがヨロイのようにザラザラしていることからヨロイザメという名前がついています。早速アゴをとりはずしてみましょう・・・!
★驚 「ガク」!かわった形のアゴ
いかがでしょう。ずんぐりとした外見からは想像もつかないような、エイリアンのようなアゴがでてきました!写真はアゴを前から見たものですが、上アゴの骨と、下アゴの骨からできていることがわかります。それでは次に、アゴを語る上で欠かせないあのパーツを見てみましょう。
★「ハァッ!?」奇妙な歯
そのパーツとは、歯です。こちらは上アゴと下アゴの歯。なんとヨロイザメ、上下のアゴで歯の形が違います!これはビックリ!!上アゴには歯が細かいトゲのような歯が、下アゴには鋭いナイフのような歯が並んでいます。
さらに、下アゴの歯を拡大すると、表面に細かいギザギザが!実はヨロイザメは自分よりも大きな生き物やその死骸などもエサにする深海のハンター。獲物の肉を上アゴの歯でおさえ、下アゴの歯で切り裂いて食べると考えられています。歯の形が違うのは、フォークとナイフのように歯を使い分けるためなのかもしれませんね。
また、下アゴを反対側から見てみると、歯の後ろにも歯がずらり。実はサメの仲間では、歯が傷つくなどして抜け落ちた時は、その後ろの歯が前にせり出して新しい歯となります。一般的なサメでは歯は個別に抜け落ちますが、ヨロイザメの下アゴでは最前列の歯が一気に、入れ歯をはずすように抜け落ちるとか・・・。虫歯知らずのうらやましいシステムですね!
★アゴが「はずれる」ワケ
さて皆さん、ここまでヨロイザメから「はずした」アゴの骨を見てきましたが、アゴが「はずれる」ということは、実はすごいことなんです。人間のアゴの骨を想像してください。人間のアゴだけの骨って見たことはありますか?実は、私達陸にすむ骨をもった動物では、ほとんどの場合上アゴの骨は頭の骨とひとつになっているため、アゴの骨だけをとりだすことはできないのです。一方、サメたちではアゴの骨は頭の骨にぶら下がるような構造をしています。同じアゴでも、生き物によって、全然つくりが違うんですね!
いかがでしたか。サメアゴの魅力、お分かりいただけましたでしょうか。サメに限らず、生き物のアゴには、生きるための秘密がたくさん隠されています。エサやりのとき、普通に泳いでいるとき・・・観察のチャンスはたくさんありますので、形・動き・開き方など、是非注目してみてください!
魚類展示課 荻本啓介