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チンアナゴの新展示手法から、ロボット開発

 チンアナゴは、砂から顔をだしているアナゴの仲間で、多くの水族館で展示されているため、ご存知の方も多いと思います。ただ、その生態は不明な点が多く、最近ようやく野生下での産卵の様子が撮影されました。

 海響館ではそんなチンアナゴの生態をよく見えるように、試行錯誤の末、2013年に開催した「春季特別企画展 ナニコレチンアナゴ ~誰も知らないチン発見!~」で、全国で初めて透明な砂(ポリマー)を用いた新しい展示手法を開発し、展示を行いました。

 実はチンアナゴの仲間が見つかった当初は、砂の中にまっすぐ潜っていると考えられていました。しかし、この透明な砂を用いると、まっすぐではなく、うねうねと曲がりながら潜っている様子がわかります。1992年に発表された論文では、野生下で全長32.4cmのチンアナゴが86.5cmの穴に入っていたという報告もありました(※1)。意外に深い穴を掘っているようです。

 この展示手法は、全国の水族館に広がっていき、今では多くの水族館でこの透明な砂を用いた展示が行われています。チンアナゴの砂の中の生態を多くの方々に観ていただくことができ、めでたし、めでたし。。。。。ではなく!このチンアナゴの新展示手法の話には、まだ続きがあります!!

 実はこの展示手法からわかったチンアナゴの砂の中の動きをヒントに、東京工業大学の塚越先生の研究室で、災害時の救助活動に活躍する可能性のあるロボット開発が行われました。

 このように生物の動きから、生体の持つ優れた機能や形状を模倣することを「バイオミメクティス」といいます。バイオミメクティスは素材、機械、医療、環境など様々な分野に貢献するものとして期待され、今回のように生物学と工学などの異分野の技術・知見の連携が必要です。今回はそのよい例になったのではと思います。この経験を通し、私自身、生き物をただ飼育し、展示するだけではない、生き物について伝えるだけではない、新たな水族館の可能性を感じることができた良い機会になりました。他の水族館で同じ手法で展示してあったら、是非この話を思い出してみてくださいね。

 海響館では透明な砂を用いた新展示手法から開発された、ロボットについても解説しています。ご興味のある方はぜひお越しください。

魚類展示課 園山貴之

※1:Tyler, J. C. & Smith, C. L., 1992. Systematic significance of the burrow from of species of grden eels (Congridae: Heterocongrinae). American Museum Novitates, 3037: 1-13.

https://www.facebook.com/kaikyokan/videos/2066417686905544/

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