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希少淡水魚を探せ!

 環境省や山口県が作成するレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されている淡水魚(希少淡水魚)を保護するためには生息地を調べ、その環境を知ることが必要です。海響館ではこれまでも下関市を流れる木屋川を中心に淡水魚の生息調査を実施してきましたが、今回、木屋川水系の約40地点を調査し、そういった希少淡水魚の生息地を探してみました。

 さて、山口県のレッドデータブックを見てみると、ドジョウやモツゴ、ヌマムツという他の地域では比較的よく見ることができる淡水魚が絶滅危惧種に指定されています。本州の西の端という地理的な要因なのかはわかりませんが、実際、木屋川水系ではなかなか採集することができない淡水魚です。なので、この3種については重点的に調査を行いました。

 その結果、モツゴ、ドジョウは中流域の“ため池”で新たな生息地を発見し、繁殖もできているようでした。モツゴを見つけた“ため池”は魚が侵入できる水路がないため、過去に人為的に放されたものではないかと思われました。ただ、生息数が少ない本種にとっては安全に、そして確実に子孫を残せる場所になっているものと思われます。ドジョウについては採集個体数が少なく、周辺の詳しい調査もできていないため、今後も調査を続けていきたいと思います。

 

 そして、ヌマムツは中流域の支流および用水路で確認できました。生息数はそれなりに多いようですが、生息範囲は半径数百mのエリアに限られているのではないかと推察できました(正確な生息範囲はさらなる調査が必要です)。

 

 

 ヌマムツとよく似たカワムツが流れの速さによって生息場所を分けているということが言われているのですが、ヌマムツ生息推定範囲でも流れが速い場所ではカワムツが採集されました。この範囲でも実際にヌマムツが生息している場所はさらに限られているのかもしれません。今後も引き続き調査を行い、ヌマムツの生息範囲の確定、おおよその生息個体数の把握など、保護が必要になった時のために情報を集めておきたいところです。

 その他にも環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されているオヤニラミは上流域で数多く採集することができ、また数mm程度のふ化したばかりの仔魚も採集でき、良好な生息環境が整っているものと思われます。

 一方、アブラボテやカワムツ、オイカワ、ムギツク、イトモロコ、ミナミメダカ、ヨシノボリの仲間などは木屋川流域に広く生息していることを確認できました。さらに今回24種もの淡水魚を採集し、木屋川の多様性を改めて実感することができました。

 

 この夏、川遊びに出かける人もいるかもしれませんが、足場の悪いところや流れの速い場所など危険な場所には近づかないようにしつつ、このような川の多様な生き物にも触れてほしいと思います。

海獣展示課 森本大介

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