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Vol.233 二又?・三又か?

 魚の中には、身近な動物のイヌやネコの名前が付くものがいる。ネズミもその一つ。ネズミゴチ、ネズミギス、ネズミザメなどの他に魚ではないが、海鼠のナマコや、関門海峡で見られるスナメリもネズミイルカの仲間である。

 

 フグの仲間にもネズミがいる。3階の暖かいフグの水槽にいつも悠然と泳いでいるネズミフグ。ハリセンボンの仲間だが、ハリセンボンより大型でずんぐりしている。学名は「2枚歯のヤマアラシ」。ヤマアラシはネズミ目の哺乳類、身体中が針でおおわれている。ハリセンボンも似ているのでこの学名になったのかもしれない。

 

 昨年だったか、いつもは寝ている針を立てているところに偶然にも出くわした。膨れるネズミフグと出会うのは、初めての体験「未知との遭遇」だ。突然フーセンのように膨れたのは、よほど気に入らないことが起こったのだろう。あわてて写真に撮ったのは良かったのだが、整理が悪くどこに収めたのか行方不明になってしまった。

 

 先日、ある大学の海洋学部の先生が、ハリセンボンの針を無理に立たせる面白い実験をした話をされていた。光刺激や、頭や背中を叩くなどの外部刺激でも、膨らまなかったそうである。ところが、腹側に触れたり刺激すると膨らんだというから、北風と太陽のようなお話。

 

 ただ、せっかく膨れても自動車のエアーバッグのように瞬時には膨らむことが出来ないので、突然襲われると敵に呑み込まれてしまうという。それでは何のために針を立てたのか意味が無くなると疑問に思っていたが、話題の「ダーウインが来た」を見てこの疑問が解けた。

 

 映像ではハリセンボンが膨らんで針を立てても一瞬にして呑み込まれた。やっぱり針を立てるのが遅れるとダメだと思っていると、次の瞬間、吐き出されてしまったのである。何もエアーバッグの様にあわてて膨らむ必要はなかった。口の中で膨れて針を立てれば敵は参ったとなる。ギリシャ神話の「トロイの木馬」戦法のようにも思えるが、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれである。

 

 ハリセンボンの仲間にはこの他に、人の顔によく似ているヒトヅラハリセンボンや、イシガキフグ、メイタイシガキフグがいるが、平成25年1月海響館では初展示のイガグリフグもお仲間である。このイガグリ君、佐渡島でさかな君が確認、新潟水産試験場、新潟水族館経由し海響館へきたと話題を呼んだ。全身に短い棘があるが、ハリセンボンと違って常に立っていて、寝かすことはできない頑固な針だ。

 

 ハリセンボンの仲間の針の状態は2通りある。常に起立している固定針、特別の場合のみ起立する折り畳み式針。どちらが有利なのかは、それぞれの生活環境にも影響されるのだろう。針の根元は二又か、それとも安定性がある鼎(3本の脚がついた釜)の3脚の様に三叉か。徒然草の中にも、この鼎を頭から被り、抜けなくなった面白い話が出てくるが、3脚は安定性が良いので、釜などにも使われている。ペンギンの中にも、2本脚だが尾でも支えて鼎状態にして安定性を保っている種がいるらしい。

 

 ハリセンボンの仲間も、折り畳みがし易いのは二又で、固定の針の方は三叉になっていると何かで読んだ記憶があり、理に適っているのでなるほどと思い今までその様に解説してきたが・・・・、実は違っていた。最近展示されたハリセンボン水槽の解説パネルには、三叉で折り畳み式の針の動きがわかりやすく図解されている。

 

 今までの間違った解説では 閻魔大王の前で申し開きができないことになる。それこそ針千本飲まされてしまいそうだ。即刻、大王に内緒で海馬(脳)のメモリーを修正したのだが・・・。二又のハリセンボンの仲間はいないのだろうか?実は、二又の折り畳み式ハリセンボンもいるのだそうだ。頭がこんがらがりそうだ。

 

解説ボランティア:唐櫃 山人

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