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vol.253 ちむどんどん

 

 外国の要人が来日した時、高級料亭、レストラン等での夕食会や晩餐会のメニューが発表されることがある。先日も、外務省が発表した5月中旬のバイデン大統領の夕食会の記事が新聞に紹介されていた。メニューは盛りだくさんある中で、魚介類は:

▼伊勢海老吉野煮 ▼くり蟹 ▼ダツ ▼あおり烏賊
▼鯛 ▼帆立 ▼信州サーモンのムニエル

 鯛や伊勢海老など定番の高級食材の中に、カタカナ2文字で『ダツ』とあるのが目に入った。驚きだった。『ダツ』がこの様な晴れやか宴席に出てくる魚だったとは!

旬は初夏というから、時期的にはタイムリーと思われるが、この『ダツ』という魚、漢字では『駄津』と書くらしいが、近くの魚屋さんやスーパーで見かけたことがない。

 

 ネット上には、釣り人に外道扱いされる魚とか、小骨が多く馴染みが無いので利用されない場合が多いとか、味は悪くないとか、さっぱりしていて食べやすいとか色々評価が見られる。

 

 実は30年前の夏、海峡に釣り糸を垂れていた時、猛スピードで突進してきたのがこの『ダツ』(英名:needlefish針魚)だった。全長71cm。初めて見る魚だ。両アゴが極端に長く、水面を切って目に入った瞬間、品種改良で肥大化したサヨリかと思った。と言うのも、この防波堤でシーズンには何度もサヨリの姿を見ていたからである。

 

 魚拓にして保存していたのを,先日危うく断捨離寸前だったが、上記記事をみて思い出した。30年振りに魚拓を眺めながら当時の状況を振り返ってみたが、どのように料理し、味はどうだったか何も思い出せない。多分、刺身か、唐揚げか、それとも塩焼きの何れかだったのだろう。『ダツ』の仲間はサヨリ、トビウオ、サンマなどだから、これらの魚と同じ様な味だったかも知れない。

 他方、夕食会での『ダツ』は、一流のプロの料理人の手で、家庭料理とは又違った風味のある味になっていたことだろう。その記事には、伊勢海老は吉野煮に、サーモンはムニエルにしたと記されているが、何故か『ダツ』の料理法については触れられていない。

 

 その後、『ダツ』が話題になることは無く忘れてしまっていたが、この様な形で思い出すことになったのは、解説ボランティア活動での魚への関心が影響したのかも知れない。釣った海岸は、今では新しい防波堤ができ、魚釣り禁止の掲示版が見える。『ダツ』との再度の対面は難しそうだ。

 

 なお記事には、夕食会に先立つワーキング・ランチでは、▼スムールのタブレに乗せたオマール海老、▼瀬戸内海キャビアがテーブルを彩ったとある。展示水槽前での解説中、よく魚料理の話題もでるので、この種の新聞記事は美味しくてNHKの朝ドラではないが「ちむどんどん」だ。

解説ボランティア:唐櫃 山人

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