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vol.249 コトヒキ(琴引)

 平成最後の・・と枕詞のような表現が目立つ年末、シマイサキ科のコトヒキの鳴き声がラジオから流れてきた。「平成最後」の聞き納めかもしれないと耳を澄まして聞いた。ポーポーとも、ぼーぼーとも聞こえ、まるで関門海峡を霧中や夜間航行する船の汽笛とそっくりである。

 この音の源は、浮き袋の外の発音筋を振動させ浮き袋を共鳴させているということだったが、聞きなれた琴の音からはおよそ想像できない音色だ。

 

 コトヒキは縦じま模様だが、これが直線でなく弓なりになっている。実は、この魚の和名を初め聞いたとき、この模様が、琴の弦の中央が琴柱で高く、両端が低く弓なりになっているのと似ているのでこの名前が付けられたと思っていたが、ラジオはこの鳴き声が和名になったとの説明だった。昔、この音色を琴の音と思った人がいたのだろう。

 年末年始を迎え、琴の音にかけた番組だったのだろうか。シマイサキも同じ様な縞模様だが、こちらは弓なりでなく直線でギターとかウクレレ引きだ。念のため我が家の琴をながめてみたが、先入観かコトヒキに思えてくる。

 

 ラジオでコトヒキのおめでたい「琴の音」を聞いた翌日は大晦日。平成最後の年越しそば、平成最後の紅白歌合戦、平成最後の除夜の鐘に続いて、海響館では平成最後のカウントダウン、そして平成最後の元日を迎えると、TVからは本物の琴の調べが流れてくる中、平成最後の年賀状が届き、4日には平成最後の新春トラフグ初セリときた。

 

 今年は昨年と同じくキロ当たり13,000円だった。一昨年より5千円ほどダウンだが、天然物が昨年より3.3トン多い9.5トンが入荷とか。「相場も維持できた。上昇に向けイノシシのように突っ走りたい」と関係者の新聞報道。ここには「平成最後の」といった空気はないようだ。

 

 ふぐ初セリが終わると、平成最後の七草粥、鏡開きと続き、節分には関門潮流水槽に平成最後の鬼さんダイバーがやって来る。そして2月11日の平成最後のふくの日まつりに続いて4月29日は平成最後のふく供養の日、そして翌日はいよいよ「平成最後の」と言える「最後」の日になる。

 それにしても最後だ、最後だと4月末日まで言われると、マイナス思考になりそうだ。何か良い表現がないものか。5月1日からは今度は、最初だ、最初だとマスコミは報道合戦になるのだろう。

 

 一つ大事なイベントを忘れるところだった。3月31日は平成最後のキッズフェスタ。ああ、また「平成最後の」が出てきてしまった。

解説ボランティア:唐櫃 山人

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