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vol.238 カクレンボウ?

 「カクレクマノミ」は、一時期、映画ファインディング・ニモの影響か子供達に大人気だった。今も2階のサンゴ水槽に展示されているが、関心度は当時ほどではなくなってきている。代わりに、昨年公開されたファインディング・ドリーことナンヨウハギが時折話題になることがあるがニモほどではないようだ。映画で熱狂した世代が移り代わったのだろうか。

 

 昨日7/22、びっくりするニュースが入って来た。新種マンボウの研究成果が発表された。シーラカンスの様に突然発見されたのと異なり、新種がいるらしいとの推測は以前からあったようだ。学名はMola tecta 。ラテン語のtectus(隠す、内密の)からの命名という。約3世紀もの間、マンボウの分類学者の強い関心から逃れていたことからと報道されている。

 

 和名は、なんと「カクレマンボウ」という。英名はHoodwinker ocean sunfishとフードを被って出たり隠れたりと、かくれんぼうのようで、何れも身を隠したり、欺くと言った意味合いからの命名になっている。隠れられると見たくなるのが人情だから、「カクレクマノミ」のように「カクレ・・」で子供達の話題になるかも知れない。

 

 2011年、ウシマンボウがマンボウとは別種であると発表されてから6年目となるが、今回は、日豪の研究者による10年にも及ぶ追跡結果の発表のようである。マンボウは体が大きい上、観察例も少なく判断が難しいらしい。今回でも27標本の分析結果だという。

 

 マンボウ家(属)の家系は複雑だ。 素人には記憶するのも難しいので下記の様に考えることにした。長年、マンボウとゴウシュウマンボウの2人兄弟(種)だったのが、2009年、マンボウ家には、ウシマンボウという大きな兄が東北の方にいることが分かって3兄弟(種)になった。

 

 それで、水槽前では、マンボウ家(属)は3兄弟(種)ですと来館者に説明してきたのだが、今回の新種カクレマンボウの登場で4人(種)兄弟(マンボウ、ゴウシュウマンボウ、ウシマンボウ、カクレマンボウ)になった、と思ったら実はそうではなく、館の説明ではやはり3兄弟(種)だと。ゴウシュウマンボウ=ウシマンボウなのだそうだ。これにはまた驚いた。ゴウシュウマンボウには学名(Mola ramsayi)が付いている一方、ウシマンボウの方はMola sp.Aと暫定的な学名のようだ。今後この一家の名前(学名)はどうなるのだろうか。

 

 どうもゴウシュウマンボウはウシマンボウ家のところへ養子に出されてしまったような印象だ。豪州から日本へ遠路ご苦労さんとなるが、養子に出された後の実家(豪州)では新しい一家(カクレマンボウ)が独立した。

 遺伝子分類学の専門家から見れば、兄弟や養子は何処か違和感を持たれるところがあるかも知れないが・・・素人の個人的感想である。

 

 マンボウとウシマンボウの正式な名前(学名)はまだ暫定的らしい。従来のモラモラの名前(学名Mola Mola)には愛着が感じられたのだが、復活の可能性はあるのだろうか。

 

 ウシマンボウは、いのちのたび博物館に1996年捕獲の3.3m、2.5tの巨大剥製が天井から吊り下げられて展示されているのを観たが、新種のカクレマンボウはこれより少し小さい。それでも最長2.4mにもなるらしい。こんな大きな図体でどこにカクレていたのか。

 

 マンボウ、ウシマンボウ、そしてカクレマンボウの3種の舵ビレはそれぞれ特徴的で見分けやすい。新種のそれは中央付近に1つだけくぼみがあることの他に、マンボウのように波打っていない。せっかく見分けやすいのに生息海域は豪州や南半球と報道されているので日本で見ることは難しいのは残念だ。

 

 今日は、早速解説にこの珍しいニュースを8組ほどの家族づれに伝えることが出来た。新種を説明するには、その背景としてマンボウ属全体から始めることになるので多少時間がかかったが、夏休み最初の日曜日で混雑している中で皆さん大変興味をもって聞いてくださった。見せたニュース記事や写真がフレッシュだったこともあるかも知れない。

 

 解説中にタイミング良く水面下へマンボウ団子を握った手がにゅ~と伸びてきた。朝食の時間だ。ここで新種の話題から目の前のマンボウの話に切替える。今何歳、獲れたのは何処、マンボウの味は、寿命は、雌雄の識別などなど定番の会話の後、餌のところでエビ、イカ、それに水分補給用ゼリーに混ぜて与えられる消化薬はタカヂアと聞いていたのに、ビオフェルミンと言ってしまった。後で気が付いたが家族づれはすでに見えなくなっていた。

解説ボランティア: 唐櫃 山人

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