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vol.241 ガッカイ

 「ガッカイ」と聞けば、たぶん「学会」を想像される人が多いのではないだろうか。「学会」は身近なところでは、街の医院で「学会出席のため休診」という案内を見かけることがある。

 新しいところでは、水族館にも少し関連がある絶滅危惧種ニホンウナギの保全に向け、東アジアの研究者が知識と意見を出し合う「鰻学会」が昨年11月に発足している。メンバーにはボランティアの参加も計画されているらしい。

 

 海響館ボランティアも定例会以外に、3年前から毎月1回「ガッカイ」が開かれている。といっても、ここでのガッカイは、「楽会」である。音楽会-音=楽会となるが、今のところ音楽とはあまり縁がなさそうである。

 

 この「楽会」は米国などでよく行われている、お互いに手料理を持ち寄るポットラックパーティに似ているかもしれない。ただ、持ち寄るのは「料理」ではなく1か月の間の出来事:活動中に来館者からこんな質問があったとか、名前を忘れた魚や生き物の疑問点、どこそこの水槽には新入りがいたとか、はたまた、○△水族館を見てきたとか、「できごと」を共有するための情報交換会といったところだろうか。

 

 メリットの一つに、いろいろな話題を持ち寄って実際に水槽前で声を出すことで記憶も持続される。せっかく資料を見て魚の名前やその特徴を覚えても、それを自分なりに咀嚼して声に出して人に話さなければ忘れてしまう。

 畳の上での水泳訓練でなく、実際にプールに入っての練習はより効果的である。100回のレッスンより、1回のステージと言われているように座学だけでは身につかないことは個人的にたびたび体験してきた。

 

 新しく参加されたボランティアも各水槽の話題や疑問点はすぐに確認でき雰囲気に早く慣れることができることもメリットの一つではないだろうか。

 

 実は、「楽会」が始まる前にも、たまたま毎週同じ曜日に活動が重なる男性ボランティア仲間で同じ様なことが行われていたことがあったが、話題がその時の世相にまで広がることもある。

 「楽会」も20回目の昨年4月の話題の一つには、連日のニュース「熊本地震」があった。今まで館内ボランティア活動中、幸いにも地震に遭遇することはなかったが、今後もないとは言いきれない。その時、どう行動するのか。来館者の最も近くにいるのは、ボランティアである。

 

 基本的には館の指示に従うことになっているが、館内はもともと暗い環境で、普段でも迷う人から尋ねられる。初めての場合はなお更で迷路のように感じるだろう。不測の事態でとっさの判断が近くにいるボランティアにも求められるかもしれない。

 地震時、エレベーターは最寄りの階でストップするか? 火災の場合は出口に近い1階か?それとも2階にストップするのか?避難ルートは?最近の災害は、忘れたころでなく、忘れないうちに次から次にやって来ている。

 

 「楽会」もいわゆる学会的雰囲気になることもある。

 外観が似ている魚名確認に水槽前から会議室へ戻り、侃々諤々と1時間以上も話し合う例もあった。魚類図鑑やウエブサイトで調べたり、専門家に相談すれば解決することが多いが、そうでない場合も結構あるものだ。

 

 楽会に特別な決まりがあるわけではない。来館者が楽しかったと思われる観覧の手助けになる対応や情報の提供ができるための活動ということで、水槽の魚のみに焦点が集中するのではなく多面的な話題も期待される。更に、それがボランティアの精神的充足感を満たす内容ならこれに越したことはない。活動のエネルギー源になるから。

解説ボランティア:唐櫃 山人

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