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vol.235 フグあれこれ

 昨年の7月に比べずいぶん早いお出ましだ。台風1号が4月26日に発生したらしい。ニュースなどで台風の強さを表すのに、「猛烈な」とか、「非常に強い」などと表現される。耳で聞いている限りでは、どちらも凄い台風が来ていることは感じるが、その裏には気象庁で、それぞれ、54m/s以上とか 44m/s~54m/s未満の風速の台風という基準が設けられていて、大きな差があることにはあまり意識することは少ないのではないだろうか。

 

 3月下旬ごろだったか、3階のマンボウ水槽付近でTV.生中継のリハーサルに出会った。フグの特集とかで、いろいろなフグ水槽の前で男性タレントが何か説明している。ちょうどフグのキタマクラについて説明しているところらしく、タレントの周りにはカメラマン、照明係その他大勢のスタッフが取り囲んでいるので先へ進めない。少し離れていたのでよく聞こえなかったが

『このフグは「猛毒」を持っていて云々・・・』

と毒についての話題が進んでいるようだった。いつもキタマクラの解説をしていると、特に年配の方は、名前からして恐ろしそうなフグのためか、フグ即ち「猛毒」を持っていて食べれば北枕状態になると一般的に思われているようだ。

 

 実は、キタマクラの毒は「猛毒」ではなく「強毒」のレベルで、それも皮の部分で、肉や卵巣は無毒とされている。とは言え、キタマクラを素人が捌いて食べるのは危険なフグには変わりない。誤って、トラフグと同じように皮を食べては大変だ。

 

 フグ毒の強さを表すのに、「猛毒」は10g以下でも死亡するが、「強毒」は10g以下では死なない毒で、「弱毒」は100g以下では死なないなど、上記の台風の強さと同じように数値で裏付けされている。死を直接連想させる「キタマクラ」の名前は、それこそ「猛毒」を持っているクサフグにこそふさわしいと以前から思っていたのだが、「強毒」のフグにどのようないきさつがあってこの名前が付けられたのだろうか。名前が先で、毒力は後から判明したのだろうか。

 

 この番組は、当日お昼に全国にライブで流されるとのことだったので、近くの飼育担当の人に上記の旨をそっと伝え帰宅した。帰宅後、早速放送を見ていると、件の水槽前での解説が始まった。男性タレントを、固唾を呑んでと言えばちょっとオーバーだが、注目していると、

『このフグは怖~いフグで、皮に強烈な[強毒]を持っていて云々・・・』

と強毒を強調したコメントに変わっていた。更に『日本全国の沿岸で釣れるので、釣った人は絶対に食べないで・・・』と注意喚起も付け加えられていた。毎年、フグ中毒のニュースを耳にするので、よい警鐘になったのではないか。ただ、日常の解説ではフグ毒にもレベルがあることを理解してもらうために「猛毒」の次に強い「強毒」があると話すようにしている。

 

 フグは430種もいるといわれている。

オープンラボで新企画の「フグの目利きクイズ」に挑戦してみた。フグが入った水槽がA、B,Cと3つある。AからB,Cと難易度が上がっていき、それぞれ何種類のフグが、何匹入っているかを回答するクイズ。最初、フグの名前を記入するものと思っていたのでコモンフグとショウサイフグの2種に迷ってしまった。

 途中で、フグの名前でなく、色や模様の形の相違を問うているクイズであることに気が付いた。これなら、名前を知らなくても、小学生でもと言えば失礼になるかもしれないが、対応できそうだ。フグの鑑識眼を養うのにはヘルプフルな企画だったが、残念ながら満点には届かなかった。やはり動き回るフグの識別は難しいと言い訳したいところだが、まだまだ「目利き」になるには「修行」が足りないのも事実。

 

 折しも、フグシーズンが終わる4月下旬には、都道府県ごとに異なるフグ調理の資格を国内で統一することを目指す研究会が動き出したようだ。ちょうど10年前にも同様の動きが報道されたが、統一することはなかなか難しいようだ。

 解説ボランティア:唐櫃 山人

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