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vol.231 おもてなし

 健康志向のためか、国内外で和食がブームになって久しい。お節を初め、七草がゆ、小豆がゆと一月は和風料理を食べる機会も多くなる季節である。海外などを旅行していて1週間も和食から遠ざかっていると無性に食べたくなることがある。そんな時、やっと日本食レストランを見つけ、久しぶりに口にした和食の味は格別だ。最近では、海外にも和食レストランが増えているので最早今は昔物語かもしれないが・・。

 

 ズワイガニ・アマダイ・イセエビ・トラフグ・ケンサキイカ・クエ・アカムツ・アンコウ・クルマエビ・アカモク・キャビアと季節の食材が並ぶ。実は、これらの魚介類は昨年12月中旬に山口県長門市で開催された日ロ首脳会談のワーキングディナーの魚介類の食材のみピックアップしてみた。

日本海に面している長門市は魚種が豊富だ。一部を除きほとんどは県内産で、海響館でもおなじみのものも見える。トラフグ以外は常時展示されているわけではないが、解説の話題の一つになりそうだ。

 

 これらの食材を使った料理は、先ず、前菜に蟹甲羅盛(セコガニ:ズワイガニの雌)が、御椀には清汁仕立に萩甘鯛包み(多分アカアマダイ)、向付にはトラフグ刺(宮崎県産キャビア添)、フグ手毬寿司、伊勢海老焼き〆洗い、仙崎ぶと烏賊(ケンサキイカ)、そして高級魚のくえが並ぶ。更に、焼物にはのど黒(アカムツ)の片妻焼、揚物にはあんこう唐揚げ、焚合には油谷車海老黄味煮、香物には長門赤モク佃煮と多くの県内産を含め合計11種もの豪華なおもてなしである。他に長州地鶏など含めると21種もあったそうだ。

宮中晩餐会で出されるフランス料理は、料理名からどのような料理か想像が難しいものもあるが、こちらは身近な料理名でわかりやすい。

プーチン氏がハラショーと感想を述べたかどうかは知る由もないが、これだけの食材で旨くないはずはない。

 

 山口県は魚の種類が豊富で、4種を除いて全て県内産とある。アカモクは市内の長府の海岸でも見かける海藻だが、叩いてネバネバにし、アツアツの白ご飯にかけて食べると美味だ。今回は赤モクの佃煮とあるのでこんな庶民的食べ方ではなかったのだろう。

 最近の報道によると、県水産センターがまとめた日本海の魚種は、1,396種で、その内、道府県別の出現種数は、山口県が最も多く880種で6割以上を占めている。

対馬暖流に乗って東シナ海から暖かい海の魚が来やすいことや、萩沖合の急深な海底地形で深海の魚が出現しやすいためらしい。そういえば、萩沖の日本海で深海魚のリュウグウノツカイやサケガシラなどの捕獲のニュースをしばしば耳にする。

 

 クルマエビは、養殖発祥の地、山口市の旧秋穂町が有名だが、長門市の楊貴妃の里が近い油谷でも養殖していることをこの報道で初めて知った。

冬の季節、アンコウ=鍋と思っていたが、唐揚げと言う選択肢もあったのだ。

魚の王様マダイや、旬の味覚ブリ属御三家の何れも献立に見られないのは少し寂しい。代わりにといってよいのかどうか、アマダイがでている。生物学上はタイの仲間ではないが、色や形がマダイに似ているので「タイ」の字が付く魚がいくつかある。いわゆる「あやかり鯛」で、キンメダイやイシダイが該当するが、アマダイもその一つ。

 ところで、ディナーには車海老黄味煮、伊勢海老焼〆洗いとエビが2種類も出ている。会談の行方は「エビでタイを釣る」のことわざ通り、「あやかり鯛」でなく真の鯛を釣り上げることが出来たのだろうか。

                                 解説ボランティア:唐櫃 山人

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