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vol.250 幕の内弁当からアラカルトへ

 今年も恒例のキッズフェスタが3月31日に開催された。

 桜は開花していたが、早春賦の詩のように春は名のみの風の寒さの中、多くの家族づれが目立った。翌日には、新元号:令和が発表され平成17年にスタートしたフェスタも、今回(第15回目)が同じ元号での最後のフェスタでもあったことを肌で感じ、個人的にも記憶に残るキッズフェスタになった。

 

 毎年、フェスタの展示品は子供達に何が良いのか、それを何処でどのように展示し解説するのか、館内の一か所に集中展示か、あちらこちらに分散展示にするのか、等々の話し合いが続くことがあった。今回は、結果的には、第1回、第2回目のフェスタのように各水槽前でクイズパネルや展示生物の剥製などによるスポットガイドが館内展示水槽近くの5カ所(関門海峡潮流水槽前、トラフグ水槽前、カブトガニ水槽前、とれとれタンク前、ペンギン村)に据えられる分散型になった。

 

 振り返ってみると、3回目以降は、フグ、マンボウ、カブトガニ、クラゲ、ペンギン、スナメリ、イルカ、シーラカンスなどを「クイズお魚博士」として、それぞれの生き物が展示されている水槽から遠く離れた1階の小松★ワローホールを中心にクイズパネルによる展示解説が9回目まで集中型で続けられてきた。

 

 分散型から集中型になったのは、フェスタ(お祭り)が館内のどこで開催されているのか来館者には分り難いとの意見に答えるもので、限られたボランティア展示解説を効率よく観覧していただけるとの思いもあった。分散型の今回、全員がキッズフェスタと書かれた被り物を身に着けたのもお祭り開催中のサインでもあった。

 分散型は、幕の内弁当のようにコンパクトに纏めて盛られていた料理が、一皿一皿アラカルトのようになった感じがする。

 

 展示は過去のものを踏襲した中にも毎年新しいアイデアが付加されてきた。

 フグ・マンボウ担当グループは3名だった。マンボウとタイやマグロの泳ぎ方の違いをヒレが動くシンプルな模型で解説するベテランでアイデア豊富なIさんや、新人だと思えないほど意欲的なNさんが、これまでのパネルや資料をベースにマンボウの基本的なかたちの紹介や、バージョンアップしたクイズで、ほとんど途切れることがない来館者に精力的に解説を続けられた。クイズの参加者は子供達だけでなく大人も積極的に参加される場面が何度も見られたのが印象的であった。

 

 今回、初めて音響付パワーポイント(PP)を使用してみた。時代も進み今やプレゼンテーシヨンはPPの時代。勿論、紙の媒体に手書きの小道具もそれなりに味があって良いが、より詳細な写真や動画など多くの情報を盛り込み来館者、特に子供達に楽しく学んでもらうにはPPも有力なツールである。クイズの補足データーやマンボウの泳ぎ方の動画などで、より理解を深めてもらえたのではないだろうか。

 

 マンボウのヒレの動きは映像で繰り返し見ているとずいぶん複雑な動きをしていることに気付き、是非来館者にも見てもらいたいと思った。背ビレと尻ビレが通常の魚の尾ビレのような働きをするが、ただ左右に振っているだけでなく、後部へ水を押し出すように微妙な動きをする。和船の櫓をこぐ時、先端が半円を描くように左右に動かすのと似ている。マンボウのヒレは、ボートの櫂ではなく和船の櫓で、スピードは劣るが長距離は疲れにくい方式のようだ。太平洋の大海原を渡るのには適しているのだろう。

 

 胸ビレも小さいながら左右のバランスを取っているのがよくわかる。ブレーキの働きもするらしい。楕円の水槽をゆっくり右旋回中なのに、舵ビレは、一瞬左旋回の動作をする不思議な光景も見られた。急激な旋回をコントロールしていたのかも知れない。

 

 IさんやNさんのクイズ解説の中でのヒレが動く模型の実演に連動して、マンボウの遊泳動画で更に詳しくマンボウが泳ぐときのヒレの様子を楽しんでもらった。言葉(聴覚)で伝えるだけでなく、パネル、サンプルなど解説小道具(視覚)や、ゲーム(興味)として音響効果も考慮し、正解には拍手音、不正解にはドカーンと爆音で答えた。

 

 水族館も展示館が分散しているパビリオン型と、一つの建物におさまっている水族館の2種類がある。前者は神戸市立須磨海浜水族園、後者は海遊館など多くの水族館がこのタイプだろうか。どちらもそれぞれ長短があるのかも知れないが、今回いろいろと考えさせられるキッズフェスタだった。

 平成のキッズフェスタは、アラカルトで始まり、アラカルトで終わった。

海響館 解説ボランティア:唐櫃 山人

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