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「ロングスパインバーフィッシュ繁殖の一騒動」
海響館では多くのフグの仲間を展示しており、いくつかの種類では繁殖も成功しています。今回は、その中でも海外からやってきた種「ロングスパインバーフィッシュ」の繁殖に成功した時のお話をしたいと思います!
本種は主にオーストラリア北部に生息し、名前のとおり、胸ビレ付近にある長い棘が特徴的なハリセンボンの仲間です。
(ロング=長い、スパイン=棘、バーフィッシュ=ハリセンボンの仲間)

令和5年6月、ネズミフグやイシガキフグといった大型のハリセンボンの仲間と一緒に3個体が展示水槽で元気に過ごしていました。大型の2種は時々卵(全て無精卵だったので、孵化せず)を産んでいたので、繁殖成功も間近ではないかとドキドキしていたところ、ある朝、ろ過槽内に孵化仔魚が舞っているではありませんか!お恥ずかしながら卵は発見できなかったのですが、念願の孵化仔魚です!ただ、、、誰がこの仔魚の親なんだろう??成長すれば分かるはず!と思いながら飼育を始めました。おそらく大型種のどちらかだろう…!と思いながら。。。

以前、ストライプドバーフィッシュというハリセンボンの仲間の繁殖・育成を成功させていたので、ノウハウは完璧です。
やはり、ハリセンボンの仲間の仔魚は非常にかわいいです!日々成長していくのをワクワクしながら観察しました。

ただ、種がわからない。。。
1つ言えるのは、ネズミフグは膨らむと棘が動いて立つ、「可動棘」と呼ばれる棘の形態をしている種で、イシガキフグとロングスパインバーフィッシュは棘がすでに立っていて膨らんでも動かない、「不動棘」と呼ばれる棘の形態の種でした。これを見れば小さくても種がわかるはずだと考えていました。
そして、顕微鏡で観察を続けていると、棘の始まりを確認することができました!
棘が初めから立っているように見える!動かない「不動棘」だ!ということは、すでに産卵を確認しているイシガキフグに間違いない!!と思い込んでしまいました。
まさかロングスパインバーフィッシュとは思いもせずに。。。

イシガキフグだと公表し、展示をし始めたときに少しずつ違和感を覚え始めました。ハリセンボンの仲間で稚魚と親魚で模様や色が違うことは良くあります。
が、あまりにもイシガキフグに似ていないのです。。。
もしかして、、、あれ?これロングスパインバーフィッシュじゃないの!?と思いはじめ、別の展示スタッフに相談したところ、これはイシガキフグじゃないぞ!という話になりました。

報道にも公表していたため、あわてて訂正の連絡を行い、当館のホームページ上でも訂正の記事を更新し、改めてロングスパインバーフィッシュとしての展示をすることとなりました。

種を間違えてしまったことは恥ずかしかったのですが、今回、日本ではほとんど見ることのできない珍しい種の繁殖に成功したことは展示スタッフとして非常に嬉しく、魚たちを健康に飼育することができた証だと思っています。また、水槽内で安心して産卵してくれたことはある意味魚に認めてもらえたことなのではないかと感じています。
これからも、いろいろなハリセンボンの仲間の飼育繁殖にチャレンジし、新たな種のかわいい稚魚を皆さんにご覧いただけるように頑張ります!
魚類展示課 玉井健太